3月2日に松尾大社で雛祭りの行事があり、神苑で「流しビナ」などが行われました。
今朝は3月としては記録的に寒い朝となったところもありました。京都市街地はそれほどでもありませんでしたが、園部では最低気温がマイナス5.4℃まで下がり、過去13年間では3月として最も寒くなりました。今日(7日)は朝7時台にKBS京都ラジオに出させて頂きましたが、太陽の明るさと寒さとのギャップを感じながらスタジオに向かいました。ラジオでは「3月7日」に京都を襲った二つの大きな災害「天明の大火」と「北丹後地震」について、少しですがお話をさせて頂きました。また、ラジオのおかげもあり、その後の「天明の大火」ゆかりの地を巡る散策も開催させて頂きました。ありがとうございました。
「3月7日」の二つの災害については、2年前のブログ記事でまとめていますので、よければご一読下さい。特に北丹後地震では生き残った方々も非常に過酷な状況下におかれ、その大変さは察するに余りあります。当時の生々しい記録や証言を読めば、涙なしではいられないほどです。京都の図書館には関連の書籍がありますので、来るべき京都を襲う地震への教訓としても読んで頂ければ幸いです。なお、天明の大火は旧暦の「1月30日」の日付の方が一般的には知られていますが、気象要因を考えるには現代の暦になおす方が、より当時の状況を想像しやすくなります。これは他の歴史事件でも同じで、例えば「桶狭間の戦い」も、旧暦の5月19日ではなく、現代の暦で「6月22日」と換算すると、信長を勝利に導いた雨は、まさに「梅雨の雨」であったことが見えてきます。
さて、3月3日は五節句の一つ「上巳の節句」です。上巳とは、陰暦3月「上」旬の「巳(み)」の日で、古代中国では川のほとりに人々が集まって厄を払う行事が行われていました。平安時代には宮中でも同様な行事が行われ、人形(ひとがた)で体を撫でて厄を背負わせ、川に流して厄払いをしました。一方で宮中では「ひいな遊び」と称される人形(にんぎょう)遊びが盛んとなり、次第に両者が結び付いて「流し雛」の行事が成立していったと考えられています。室町時代以降、雛段に豪華な雛人形を飾るようになり、江戸時代には宮中や武家から庶民にも文化が伝わって、女の子の成長を願う「ひな祭り」として定着していきました(雛祭りの成立は諸説あり)。
松尾大社のひなまつりは、3月3日かその前の日曜日に行われています。拝殿での神事(祈祷)の後、松風苑内の「曲水の庭」で、「流しビナ」の行事が行われ、その後、宴会場にてペーパークラフト作りもあります。拝殿での祈祷は初穂料1000円で参加することができ、子どもたちはお雛様の可愛らしい絵が入った短冊に自分の名前やお願い事を書いて奉納することもできます。この紙が、祈祷の終了後に松風苑内の「曲水の庭」で流されるのです。今年は例年以上に来られる人が多かったようで、拝殿は時間になると人が入りきらないほどいっぱいになりました。
しばらくして祈祷が終わると、今度は建物内から「曲水の庭」を望める場所へと皆さん移動します。通常は廊下の場所ですので広さはなく、溢れんばかりの人の密度となっていました。願い事などがかかれた短冊は、丸いトレーに乗せて神職さんが曲水の庭に流していきます。なかなか優雅な光景でした。流れの途中でひっかかってしまった時は、巫女さんが棒で動かして下流に流します。こうして厄を流すということですね。
その後、希望者は建物内の大広間で吊り雛のペーパークラフトを作りました。子どもたちは喜んで楽しそうに作っていったのですが、人数が多く会場も満員。そして例年は一人一つのところが「一家族に一つ」配布となったペーパークラフトも、数が足りなくなってしまいました。急きょ、雛祭りではない別のペーパークラフトが用意されて配られましたが、今年は予想外の人出だったようです。
広間の前には雛人形も飾られて、一緒に写真を撮ることもできました。子どもたちには帰る時にお菓子も配られていて、神社の心遣いを感じられます。松尾大社も氏子圏は広く、告知によってはたくさんの子どもたちが訪れるのかもしれませんね。来年以降の人出は未知数ですが、機会がありましたら訪れてみて下さい。なお、流しビナの見学等は無料。祈祷や短冊の記入は初穂料が1000円です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。