圓光寺は私が個人的に好きなお寺で、もう15年ほど前の学生時代から訪れています。寺の創建は徳川家康によります。元は伏見に開かれた学校で、後に寺に改められました。その後、相国寺境内を経て現在地に移り、今に至っています。このような由緒から、境内には家康の墓もあり、学校として多くの書籍を印刷・発行したところから、当時使われた木活字5万個が伝わっています。本尊の千手観音像は運慶の作と伝わり、渡辺始興の寿老人図や円山応挙の屏風も所蔵し、寺宝は立派なものがあります。
近年は紅葉の綺麗なお寺として知名度が増し、紅葉シーズンに静かにお庭を眺めることは難しくなりましたが、それ以外の時期ならばゆっくりと座って楽しむことができます。お庭は「十牛の庭(じゅうぎゅうのにわ)」と呼ばれ、禅の悟りにいたる道筋を牛を主題として表した十枚の絵・十牛図にちなんでいます。牛は誰しもが持っている仏心をあらわすのだそう。庭の中心にはその牛に見たてた石が据えられ、庭を引きしめています。
圓光寺の魅力は、この額縁状にお庭を楽しめる風景に加え、そのお庭を散策できることにもあります。座って眺めていたのとは全く異なった印象でお庭を楽しめ、こういった場所は京都でも多くはありません。庭には栖龍池と呼ばれる池もあり、洛北で最も古い池といわれています。自分の感性にあった場所を探し、風景をカメラに収めてみるのも楽しいでしょう。
また圓光寺で人気なのは、頬に手を当ててほほ笑むお地蔵様です。本堂からお庭へ歩くとほどなく現れますので、気が付きやすいでしょう。秋はカエデが散ると、散り紅葉を見つめているようにも見えます。いずれもたいへん癒し系のお地蔵様ですので、訪れる際には見つけてみてください。
様々な魅力がある圓光寺ですが、高台からの眺めもその一つ。洛北が一望できます。展望スペースも近年足もとが整備されて、より行きやすくなりました。歴史や寺宝、仏像や絵画に至るまで、総合的にレベルの高い圓光寺。いまは緑を静かに楽しめる時期で雨の日にもおすすめ。近年整備された奔龍庭(ほんりゅうてい)や竹林の道もありますので、最近訪れていない方でも楽しめるでしょう。詩仙堂に訪れる際などには、ぜひ足を延ばしてみてください。
「京ごよみ手帳2019」訂正のお知らせ
・P39の三十三間堂「楊枝のお加持と大的大会」の日程が1月14日となっていますが、正しくは「1月13日」です。
・P225の「京都御所」のデータで、2番の休みは「月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始・臨時休あり」です。
ご迷惑をおかけいたします。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。