6月5日に宇治の県神社(あがたじんじゃ)で県祭りがあり、境内では芸能の奉納がありました。
宇治の一年の行事の中でも、宇治川花火大会と並んで非常に賑わうのが県祭りです。県神社を中心に宇治橋から宇治駅付近にかけて夜店が立ち並び、周辺の若者が大集合します。人出は約8万5千人を数え、その密度は祇園祭の宵山にも匹敵するほど。熱気はものすごいものがあります。
県神社は、木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)を祭神とする神社で、創建は大和朝廷の時代にさかのぼるという古社です。平安時代中ごろに、藤原頼通が平等院を創建した際には鎮守社となりました。社名は祭神の別名である「吾田津姫(あがたつひめ)」に由来するとも、古代の宇治県(あがた)の守護神から来ているともされています。県祭りは「暗闇の奇祭」とも呼ばれ、6日未明に行われる「梵天渡御」がクライマックスです。ただ先述の通り、現代では夜店がメインのようになっています。なお、儀式の詳細については次回以降で詳しく書く予定です。
個人的にはかねがね見たいと思っていましたが、いかんせん梵天渡御の時間が深夜から未明で、終電が無くなってしまうため機会を得られませんでした。今年は、一念発起して宇治のホテルに泊まって取材をしてきました。自家用車か近隣の方でなければ、なかなか最後まで見るのは難しいお祭りです。夜店は夕方から若者が出て大いに賑わいます。そのためか、警察官が駅を含め一帯に多数配置されて、ものものしい雰囲気もあります。
夜店に興味がない方は、県神社の境内に入ってみて下さい。19時前から21時頃にかけて、各種芸能の奉納や19時頃からは護摩焚きも行われています。今回私が見たのは「音曲ケロケロ座」による、県神社のご祭神・コノハナサクヤヒメの物語「さくやうた」です。神話の世界を分かりやすくミュージカル風に演じておられました。演出も凝っていて、なかなか面白かったです。
美しいコノハナサクヤヒメは、アマテラスの孫であり天上界から地上に降り立ったニニギノミコトに愛されます。ニニギはコノハナサクヤヒメの父であるオオヤマツミノミコトの元へと結婚の許しを請いに行きますが、そこでは是非とも姉のイワナガヒメも一緒に妻にしてほしいと嘆願されました。しかしイワナガヒメは見た目が美しくはなかったため、ニニギはコノハナサクヤヒメだけを妻とし、イワナガヒメを断ってしまうのです。
やがてコノハナサクヤヒメはニニギの子を授かりますが、父のオオヤマツミとイワナガヒメは呪いをかけて、ニニギにコノハナサクヤヒメの子は自分の子ではないのではという疑念を抱かせてしまいます。愛するニニギから疑いの目を向けられてしまったコノハナサクヤヒメは、身の潔白を証明するため産屋に火を放って3人(柱)の子を産むという筋書きです。以上の話が分かりやすく演じられて、最後には大きな拍手が送られていました。
ちなみに、コノハナサクヤヒメは桜の花のように美しくとも儚いものの象徴、一方のイワナガヒメは岩石のように醜くとも永遠なるの存在の象徴でもあります。コノハナサクヤヒメしか妻にしなかったニニギによって、子孫である神々や天皇の命は有限になったと神話は伝えています。
県神社では続いて「三本柳さんさ踊り」が奉納されました。岩手のさんさ踊りを宇治に伝えている団体のようです。太鼓や横笛に合わせて軽快な踊りが披露されました。京都では初めて見た芸能です。日本各地に興味深い踊りが伝わっているのですね。さて、次回以降で、いよいよメインの「梵天渡御」をご紹介します。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。
初めまして、こんにちは☆
あがた祭りで神社のご祭神この花咲くや姫の劇を上演している、音曲ケロケロ座のきゃさりんと申します。
6月の上演についての記事を書いてくださいましてありがとうございます。
写真も美しく撮っていただいていて、またストーリーも正確に伝えていただき、とてもありがたく思いました。今頃になって、記事を発見して驚きました。
座員一同膝を正して、サイトを拝見した次第です。
それで、お願いがあります。いつも、記録用のビデオや写真を取り損ねるのです。吉村さまのサイトに私のBlogからリンクさせていただきたいことと、写真を個人的に使用させてもらってもいいでしょうか?
いきなり不躾なお願いをして申し訳ないですが、記事の内容と写真が素敵で、メールさせていただきました。