龍安寺では、6月まで方丈で買い戻されたバショウ(芭蕉)の襖絵が公開されています。
世界遺産の龍安寺は本堂の前に広がる石庭が知られ、15個の石が並ぶそのお庭を眺めに世界中から観光客が訪れます。そのため多くの方が本堂の内側には背を向けますが、現在本堂内部で6月10日まで公開されているのが123年ぶりに寺に戻ったバショウ(芭蕉)の襖絵です。1600年代初めに描かれたとみられる襖絵で、昨年12月に静岡の個人収集家の手から龍安寺に戻りました。
明治時代には廃仏毀釈の影響で京都の寺も困窮しましたが、龍安寺は明治28(1895)年に襖絵を売りに出し、芭蕉図を含む襖絵90面のすべてが売却されたとされます。近年になりアメリカのメトロポリタン美術館やシアトル美術館で龍安寺の襖絵がみつかり、海外に渡っていたほどの名品でした。
明治期に売られた龍安寺の襖絵は、京都市内の寺に引き取られた後、旧三井財閥の関係者を通じて「筑豊の炭鉱王」の異名を持つ九州の実業家・伊藤伝右衛門の手に渡り、昭和8(1933)年に大阪城築城350年を記念した展覧会で一般公開された後、散逸したとみられています。この芭蕉の襖絵は、亡くなる数年前の1945年ごろに手放され、その後に英国の美術商に転売され、さらに2003年ごろ、静岡市の個人収集家が買い求めていたものだそうです。
龍安寺の本堂は、1797年の火災の後に塔頭の西源院の方丈を移築したもので、芭蕉の襖絵も元は西源院の方丈に描かれていたものです。狩野派か海北派の筆によるものとされますが、絵は元の通りではなく後から大幅に手が加えられ、西洋画のような陰影がつけられています。海外の方の好みに合わせる形となって、日本人の目から見ると違和感を感じるかもしれません。ただ、こうして再び龍安寺に戻ったのは喜ばしいことです。
龍安寺は2010年にも、売却された襖絵のうち「群仙図」の一部と「琴棋書画図」の一部の計6面を買い戻しており、今回はそれらも併せて展示されています。往事の龍安寺を忍べる貴重な機会ですので、ぜひ足を延ばしてみて下さい。なお、襖絵はフラッシュを使わなければ写真撮影は大丈夫とのことです。
「京ごよみ手帳2019」訂正のお知らせ
・P39の三十三間堂「楊枝のお加持と大的大会」の日程が1月14日となっていますが、正しくは「1月13日」です。
・P225の「京都御所」のデータで、2番の休みは「月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始・臨時休あり」です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。