下鴨神社の糺の森の中にある雑太社(さわたしゃ)に、ラグビーボール形の賽銭箱が設置されていました。
糺の森の中には、流鏑馬神事などの時に使われる馬場があり、その中ほどにラグビー(蹴球)の「第一蹴の碑」が建っています。ラグビーは明治32(1899)年に英国留学から帰った田中銀之助と英語教師のクラークによって日本に紹介されました。最初は慶応義塾の塾生たちによって蹴球部が作られて行われていました。
そして明治43(1910)年になって、その蹴球部に所属してた学生の真島進が、妹の婚約者である堀江卯吉の住む京都の下宿先を訪問して蹴球の面白さを語り、さらに糺の森に堀江をはじめ第三高等学校(京都大学の前身)の学生30余名を集めて蹴球を行ったのが京都でのラグビーの「第一蹴」とされます。その後、三校では堀江を中心として日本で2番目の蹴球部が作られました。そしてラグビーの面白さは次々に関西の学生に広まり、ほどなくラグビー部は各地の学校に創設されていきました。この「第一蹴の碑」は、三高蹴球部OBによって昭和44(1969)年に建てられたものです。
さらに2017年、碑の傍らに再建されたのが「雑太社(さわたしゃ)」です。このお社は、かつて下鴨神社内で斎王が宿泊所として用いた舘立(かんだち)と呼ばれる御所内の「雑太(さわた)」という地に、鎮守としてお祀りされていました。しかし応仁の乱によって舘立が焼失したことに伴って、現在地に遷座したのだそう。雑太社(さわたしゃ)は、明治時代初期の古絵図を見ると「澤田社」と書かれていますが、これは「雑太」が読みにくいこともあって便宜的にそう書かれているとのことです。ご祭神は、時代によって変遷があるようですが現在は「神魂命(かんたまのみこと)」とされ、その「魂」は「玉」に通じるとして、先述の「第一蹴」がこの場所で行われたとされます。
社殿は、造替のため昭和20年末に解体されましたが、以後再建されずに時が過ぎていました。しかし、2019年にラグビーワールドカップが日本で開催され、その抽選が京都で行われるのにあわせ御遷宮記念事業の一環で再建されました。抽選会に先立って、各国の関係者が「第一蹴の碑」と「雑太社」の前に集まって、蹴鞠の奉納・体験も行われました。以後、ラグビーゆかりの社として知られるようになり、雑太社に設けられた絵馬掛けどころにはラグビーの形の絵馬が掛けられるようになっているほか、ラグビーボール形の鈴もユニークでした。先日、参拝に訪れてみると、なんとラグビーボール形のお賽銭箱も登場しています。昨年の12月23日に株式会社フルタイムシステムが奉納したもので、実はラグビーボール形の鈴も同じ会社が2018年に奉納したものです。ラグビーに興味のある方はぜひ訪ねてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。