毎年1月3日に北野天満宮で行われているのが新春奉納狂言です。猿楽會と茂山忠三郎社中の主催により、境内の東側にある神楽殿で奉納されています。参拝ルートからは少し外れているため、大混雑ではありません。神楽殿は柱が手前にある分、やや見にくいですが、狂言自体は、やはりとても面白く、笑わせて頂きました。
演者には外国出身の方や女性の方もいて、独特の語り口調や表情、大きな所作など体全体を使って楽しませて下さいます。私は時間の都合で全ての演目を見ることは出来なかったものの、初詣で賑わう境内の方が、かわるがわるご覧になっていました。特に面白かったのが「蟹山伏」。大峰山、葛城山での修行を終えた山伏が、供の強力(ごうりき)を連れて、蟹の精と遭遇。強力が金剛杖で蟹の精を退治しようと襲いかかりますが、あっという間に耳を挟まれてしまいます。さらに、それを助けようと山伏が呪文を唱えますが、反対に山伏まで耳を挟まれてしまい、最後は蟹の精は2人を突き倒して去って行くという筋書きです。実際に目にするのは初めてで、蟹の精霊の動きの面白さは予想以上でした。
また、最後の「福の神」は、出雲の大社に年の瀬に参詣する信心深い2人が豆まきを始めると、福の神が現れます。「はーっはっはっはっ!」と高らかに笑う様子が印象的。以下、文化デジタルライブラリーより引用すると、福の神は「楽しゅうなるための元手」について語り、「元手とは金銀や米などではなく、心持ちのことだ」と伝えます。さらに、早起き、慈悲、人付き合いを大切にすること、夫婦仲よくすることを説くとともに、わたしのような福の神に美味しい神酒をたくさん捧げれば楽しくなること間違いないと言って、謡い舞い、朗らかに笑って帰っていくのです。北野天満宮の奉納では、最後は役者さんが福の神の後ろに勢揃いして謡を行って締めとなりました。新年に文字通り福を頂き、めでたい気持ちになれました。また、来年以降も機会を得て見に行ければと思います。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。