24日に向日神社を訪れると、まだ紅葉が残っていました。
向日市は京都市と長岡京市と接している市で、全国で3番目に面積が小さい市です。大都市である京都市と、都の名前として知名度のある長岡京市との間で、少し影の薄い市といえるかもしれません。しかし、史跡の密度は高く、乙訓(おとくに)地域の代表的な古墳があり、長岡京の中心地である「長岡宮」の跡も長岡京市ではなく向日市にあります。西国街道が通り、竹林の美しい散歩道も整備されています。日蓮宗が京都で最初に広まったのも向日市。歩いてみると、宇治や亀岡、長岡京に負けない面白さがあると、個人的には推したい場所が向日市です。
向日神社。延喜式内社としての古い由緒を持つ神社です。創建は長岡京ができるより前の718年と伝わります。向日山という小高い山にあり、長い参道が特徴で、桜と楓の時期には大変美しくなります。ご祭神の第一は、五穀豊穣の神である向日神(むかひのかみ)です。向日神は、大歳神(おおとしのかみ)の御子、御歳神(みとしのかみ)の別名で、向日山に降臨されたため、向日神と呼ばれるようになりました。
この「向日」という字は、文字通り「日に向かう」と解されていて、長岡丘陵の南端にある向日山は、日が東から昇ってから西に沈むまで光を浴び続けるため、そのように呼ばれるということです。この向日山には、かつて祈雨・鎮火の神である火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)祀る火雷神社があり、向日神社を上社、火雷神社を下社と呼びました。ただ、下社は荒廃したため1275年に上社に合祀され、現在の向日神社には向日神・火雷大神に加え、火雷大神の后という玉依姫命(たまよりひめのみこと)、下社を創建したという神武天皇も祀られています。
向日神社の本殿は室町時代の応永25(1418)年から4年をかけて建造され、三間社流造という室町時代の神社建築の代表例として、国の重要文化財に指定されています。こうした古建築の本殿であることから、東京にある明治神宮の本殿のモデルともなり、明治神宮の本殿は向日神社の本殿を1.5倍のスケールにして建てられているそうです。現在、日本で最も初詣の人出があるのが明治神宮ですので、そのルーツとは驚きです。
神社の立つ向日山は「勝山」とも呼ばれています。豊臣秀吉が朝鮮出兵のため前線基地の肥前名護屋城へと向かう際、向日神社で休憩をしました。秀吉が社人に社殿のある山の名前を尋ねたところ、「勝山」と返し、秀吉は出兵の門出にふさわしいと喜んだということです。このように、様々な面白い歴史を秘めた向日神社。実は境内の北には元稲荷古墳という乙訓最古の古墳があり、境内の南には向日市天文館もあります。24日は、まだ参道の紅葉が残っていて驚きました。桜も美しい神社です。機会がありましたら訪れてみて下さい。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。
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