寺町通にある革堂(こうどう)の七福神像が暖かそうな姿になっていました。
革堂(こうどう)は正式には行願寺と称するお寺で、西国三十三所観音霊場の19番札所として信仰を集めています。元は上京(一条小川)にあり、有事には町の人々が集うお堂でもありました。創建は1004年とされ、行円上人によって建立されました。行円上人は、まだ狩人だった時に一頭の牝鹿を射止めたところ、血を流しながらも子鹿を出産した姿を見て心を打たれ、仏門に入ったと伝わります。行円上人は、日ごろから鹿の皮衣をまとっていたところから「皮聖(かわのひじり)」と呼ばれ、上人が拠点とした行願寺も「革堂」と呼ばれるようになりました。現在の本堂は、文化12(1815)年に建てられ、堂内には行円上人作と伝える本尊の千手観音像が祀られています。
革堂は都七福神巡りの「寿老人」を祀る寺としても知られ、新年は七福神巡りの大きな色紙を持った方も来られます。寿老人は中国から伝わった道教の仙人でご利益は長寿。りゅうこつ座のカノープスという一等星を南極老人星と呼び、その星を神格化したのが寿老人だとされます。カノープスは、太陽・月・惑星を除くとおおいぬ座のシリウスに次いで明るい一方、北半球ではその高度は低く、なかなか見られません。そして高度が低い分、夕日と同じく大気の作用で色は赤く見えるため、老人の星とされました。昔の中国の人々は滅多に見られないこの星は、世の中が平和なときに現れる縁起のよい星と考え、一方で皇帝の寿命も支配するとも捉えました。そのため皇帝からは特に信仰されました。
実は七福神の中の「福禄寿」も本来は寿老人と同じ存在で、ご利益も同じくご長寿。日本では別々の存在になっているため話しがややこしいですが、寿老人の方が鹿を連れているのが一般的。ただ、革堂の寿老人は、一般的な福禄寿のように頭が長いのが特徴で、福禄寿と寿老人の姿はパッと見の外見ではわかりづらいときもあります。境内には七福神の石像もあり、先日訪れると帽子をかぶりマフラーが巻かれて、暖かそうな姿となっていました。この時期にご参拝頂くのもおすすめです。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。