2月1日と2日に、須賀神社では懸想文(けそうぶみ)売りが登場しました。
須賀神社は聖護院地域の産土(うぶすな:土地を守護する神)で、交通神社があることでも知られています。懸想文(けそうぶみ)とは聞きなれない言葉かと思いますが、いわゆる恋文、ラブレターのことです。江戸時代になると、恋文に似せて縁起のよい言葉を書き連ねて、お正月に売るようになりました。この懸想文をタンスや鏡台の引出しに人に知られないように入れておくと、なんと!!顔かたちがよくなり、さらには着物が増えて良縁にあずかれるといわれています。これはうら若き女性に飛ぶように売れるはずですね。今年は、各地の節分行事が中止・縮小となり、須賀神社では豆まきは中止となりましたが、懸想文は例年通りの授与となりました。また、今年は節分が2月2日でした。
懸想文売りは、一見怪しげな姿。これにはわけがあります。昔は相手の顔を見ることなく、まず恋文(懸想文)によって相手の良し悪しを判断していました。しかし当然、恋文にも得手不得手があり、困っていた人のニーズから生まれたのが「代筆」の仕事。古文や和歌などの教養があってもお金が無い貧乏公家には、ぴったりのアルバイトだったのです。
しかし貧乏公家にも家柄やプライドはある。ということで、烏帽子・水干で公家の装束をしながらも、顔を人に見せないように覆面姿をしています。なんだか涙ぐましいですね。肩にかけているのは梅の枝。昔は梅の枝に文を付けて売り歩いていたからだとか。梅の枝で新春の風情をかもしだすとは、なんともお公家さんらしい。今もその名残で、ちゃんと持っている枝には文が結びつけられています。懸想文は昨年から1500円となりました。書かれている文章は毎年変わり、宛名の繋がりを毎年見るのも興味深いです。今年の文面は例年にも増して美しい文章だったと思います。疫病退散も叶ってほしいと思います。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。
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