気温41℃の時代に突入も、観測頻度の違いに注意

嵐山 渡月橋 8月11日
全国で厳しい猛暑が続いています。京都も19年ぶりに39℃を記録し、高知県四万十市江川崎では、日本観測史上初めての41.0℃を記録しました。ただ、これは観測方式の変化も要因の一つとして挙げられます。

京都も記録的な高温に

天龍寺11日の京都は、最高気温が39.0℃に達しました。気温が39℃となるのは1994年以来19年ぶり。京都133年間の観測史の中でも歴代5位に入る高温です。実は歴代1位から4位の高温は、全て1994年の8月5日~8日に4日続けて記録されたものです。上には上があるものですね。とはいえ、京都は10日から今日13日まで4日続けて38℃を超え、明日14日も予想最高気温は38℃と、引き続き非常に厳しい猛暑となります。

嵐山この先の週間予報も、20日まで全てで36℃以上の予想となっています。さらに、本日(13日)発表された「異常天候早期警戒情報」の資料を見ると、8月18日~24日も平年より「かなり高い」可能性が50%程あり、少なくともあと10日は厳しい暑さとなる見込み。猛暑に終わりが見えません。今年の暑さは大変な長丁場となりそうですので、日々の睡眠、食事をしっかりとり、外での運動は出来るだけ避けるのみならず、室内でも冷房を使ったり、まめに水分を取るなどして熱中症には最大限の警戒を続けて下さい。

多治見と熊谷どちらが暑い?

鴨川12日は高知県の江川崎で「41.0℃」の日本観測史上最高気温を記録しました。これまでの記録40.9℃を0.1℃更新しての日本記録です。更新された40.9℃は、2007年8月16日に多治見と熊谷で観測された気温でした。私は当時、偶然にも多治見付近にいて、40℃台の熱風を体感しましたが、想像以上に厳しい暑さでした。

鴨川 京の七夕この時の気温を根拠に、熊谷と多治見は、それぞれ「暑さ日本一」を主張していました。しかし、両者には決定的な違いがあります。それは「観測の頻度」です。当時の多治見は「10分毎の観測」で、その中で40.9℃を記録しました。しかも40℃台を長時間記録しています。一方の熊谷は「瞬間値」だったはずです(違っていたらすいません、少なくとも1分毎ではあります)。いずれにしても、観測頻度が全く違うなかで、ほんの一時40.9℃を記録したに過ぎません。もし当時の多治見の観測頻度が熊谷と同様だったら、41℃を超えていた可能性さえあったと考えられます。

鴨川 京の七夕余談ですが、私が調べた中では、全国のアメダス・気象官署の中で「最高気温の平年値」が最も高いのは多治見です。具体的には、多治見の最高気温の平年値のピークは34.0℃。対する熊谷のピークは32.5℃で、大きな開きがあります。その他、群馬県や静岡県、山梨県、九州の日田など、高温ランキング常連の観測点の平年値と比べても、多治見の最高気温の平年値34.0℃は高いです。つまり、「多治見は全国のどこよりも安定して高温を記録する街」といえます。すなわち、気象予報士としては「熊谷よりも多治見の方が暑い」という結論に至るのです。

江川崎の41.0℃は、観測頻度が60倍での記録

五条坂 陶器まつり初めて日本で40℃超が記録されたのが1927年、山形で40.8℃が観測されたのが1933年、多治見と熊谷で40.9℃を記録し高い壁を破ったのが2007年、そして2013年、ついに日本の最高気温は41℃の時代に突入しました。単純にこの数字だけみれば、年々、日本の暑さが加速しているように見えます。しかし、今回の41.0℃の記録は、近年のアメダスが、それまでの10分毎の観測から「10秒毎の観測」に変わっていることが要因の一つであることに注意が必要です。つまり、これまでよりも「観測頻度が60倍」もあるぶん、高温や低温の記録が更新されやすくなっています。気象庁は、平均して最高気温で「0.2℃」高くなり、最低気温では「0.1℃」低くなる傾向があるとしていますが、日々の気温はそれ以上に影響を受けています。

六波羅蜜寺 桔梗具体的に見ていきましょう。今回の江川崎の41.0℃は、12日の13時42分に観測されました。仮に、2007年の多治見と同じ基準の「10分毎の観測」だったとすると、最高気温は13時30分の「40.3℃」が最高です。つまり、日本の観測史上1位の高温記録は更新されなかったことになります。同様に10日の40.7℃は「40.4℃(14時00分)」に、11日の40.4℃は「40.0℃(14時10分)」になり、10分毎観測では、41℃を出した日よりも、その前日の方が高いという結果になってしまうのです。また、本日(13日)の40.0℃も13時8分に観測されていますので、10分毎観測だとすれば40℃には達していない可能性が高く、「史上初の4日連続40℃」は記録されていないことになります。

賀茂川以上にように、2007年に多治見で40.9℃が観測された時は「10分毎の観測」、今回の江川崎の41.0℃や4日連続40℃超は「10秒毎の観測」と、そもそもの観測頻度が60倍もあるという点で、データの取り扱いに注意が必要。単純に「多治見より、江川崎が暑かった」とは言えないはずです。

嵐山公園 ヒルガオ気温は風の変化で、僅か数分の間にも乱高下することがよくあります。今回も、江川崎で41℃を観測した18分後の14時00分には、気温は36.5℃まで急激に下がっているのです。それほど気温の「10秒毎観測」の効果は大きいと思われ、もし2007年当時に多治見が10秒毎の観測だったら・・・、「日本初の41℃」の称号は、多治見となっていたかもしれませんし、あるいはそれ以前に他の観測点が、その称号を手にしていたかもしれません。ちなみに現在は、多治見を含め全国各地のアメダスが10秒毎の気温観測となっています。観測頻度が高くなっている分、各地で「記録的な」暑さは観測されやすくなっていて、恐らく遠くない将来に、再び41℃を観測する地点も出てくるのではないでしょうか。

真夜中には日本一暑い都市部

下鴨神社 糺の森さて、江川崎や多治見のような周りを山に囲まれた場所は、フェーン現象によって日中の限られた時間は猛烈に暑いのですが、夜は比較的順調に気温が下がってきます。一方、11日の東京は、丸一日30℃を下回らないという、最低気温の最高記録をつくりました。東京の過去138年の観測史の中で、最も気温が下がらなかった日です。これは日本歴代でも2位の高温。実は、東京の最低気温の高温記録のベスト10は、全て1990年代以降で、近年はヒートアイランドの影響が顕著となっています。

京都御所 建礼門都市部は、日中も厳しい暑さとなる一方で、夜間も気温が下がりにくく「真夜中に日本一暑い場所」のは、たいていはどこかの大都市です。寝苦しい時は、無理せずに冷房を使い、寝ている間に脱水症状で熱中症にならないようマメに水分を補給するなどして下さい。以上、今回の暑さの原因分析はプロの予報士にお任せするとして、アマチュア予報士として、データの取り扱いについて書いてみました。いずれにしても、厳しい猛暑はまだまだ当分の間続きます。もはやこれは「災害」。命を落とさぬよう、しっかりとした対策を取って、乗り切っていってください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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