10月15日に野宮神社の斎宮行列が行われ、嵐山や嵯峨一帯を行列が進み、大堰川で禊の儀も行われました。
斎宮行列は縁結びのご利益で知られている野宮神社(ののみやじんじゃ)の行事です。斎宮は、斎王とも呼ばれ、天皇が新たに即位するごとに伊勢神宮(祭神は天照大神)へと遣わされた未婚の皇族女性(内親王・女王)のこと。天皇家の祖先は天照大神で、その神のために奉仕する役割をになうのが、斎宮だとされています。「斎」には「潔斎して神に仕える」という意味があります。
この風習は飛鳥時代の天武天皇の頃にはすでに確立されており、南北朝時代の後醍醐天皇の頃まで およそ660年間、64人の姫君が遣わされていたと言い伝えられています。なお、伊勢で奉仕する施設のことも斎宮と呼びます。また、賀茂の神に奉仕する皇女もおり、こちらは斎院と呼ばれています。そして斎宮と斎院を総称して「斎王」と呼び、葵祭の主役とされるのが斎王代は、斎王(斎院)の代理という意味になります。つまり、この斎宮行列でも斎王代と呼んでもよいのですが、区別するため「斎宮代」と呼ばれ、行列名も斎宮行列となっています。(ただ三重県のお祭りは”斎王まつり”となっています。)
野宮神社はその斎宮が伊勢神宮へ向かう前に身を清める、精進潔斎の場所だったとされる神社です。皇女はまず宮中の初斎院(しょさいいん)で潔斎し、さらに野宮でもう1年潔斎をしたと言われています。野宮は新たな斎王が選ばれる度に占いで決められた嵯峨野の各所に置かれ、一代で壊すことがならわしであったとされています。すなわち源氏物語の賢木の巻に描かれている野宮も、現在の野宮神社の場所であったかは定かではないのです。なお、賀茂社に仕える斎王(斎院)が潔斎にこもった場所は、西陣にある櫟谷七野神社(いちいだにななのじんじゃ)にあったとされています。
さて、今年の斎宮行列は雨天のため中止が危ぶまれましたが、多少経路を縮小しながらも予定通り行われました。斎宮代をはじめ、雨の中での行列は大変だったと思いますが、本当にお疲れ様でした。行列は、野宮神社での神事の後、竹林を通って出発します。往時は野宮を出て伊勢神宮に着くまで5泊6日もかかる長旅でした。今でも行列が竹林を抜けてくる様は往事を思わせる雰囲気があります。やはりメインは斎宮代。十二単(ひとえ)のお姿はたいへん美しく見えます。今年は、雨のため側面がビニール(?)で覆われているのがやや残念でしたが、行列を行ってくれるだけでもありがたいというものです。斎宮代の後には付き人や命婦が続きました。例年は艶やかな着物が見られますが、今年は合羽を着ており、これはこれで貴重な眺めとなりました。
嵯峨嵐山駅前では牛車が待機して列に加わります。列はその後、天龍寺前を経て渡月橋へと向かい、例年は中の島で記念撮影を行いますが、今年は雨のため撮影はなくなり、そのまま大堰川の岸に設けられた斎場へと向かいました。そして斎宮代による禊(みそぎ)の儀が行われます。葵祭の斎王代は賀茂社の御手洗川(みたらしがわ)で行いますが、同様の清めの行事を斎宮代も行うのです。
雨の中、斎宮代は葱花輦(そうかれん)を降りると、そのまま雨に濡れて儀式の進行を待たれ、禊の儀に望まれました。見ているほうからすると、せめて朱傘でもあればという思いですが、嫌な顔ひとつせず、凛々しいお姿でやり遂げてくださいました。今年のような雨の降りしきる中での儀式もなかなかないことでしょう。最後に斎宮代は大堰川に面して伊勢神宮を遥拝して儀式は終了。ここで解散です。本当に皆さまお疲れ様でした。斎宮行列は行程は短いながらも列が美しく、斎宮代の気品も葵祭の斎王代に引けを取りません。毎年10月の第3日曜日に行われますが、来年は好天に恵まれればと思います。禊の儀の様子の一部は動画もありますのでご覧ください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2018」監修。特技はお箏の演奏。