仁和寺の北東にある転法輪寺が「京の冬の旅」で3月18日まで特別公開されています。
転法輪寺は江戸時代の宝暦8(1758)年、関通上人によって、北野下ノ森の滝ヶ鼻町付近に創建されました。関通上人は箱根の関所を通る際に通行手形による往来を目にして、同じように南無阿弥陀仏の符券を持てば極楽世界の門が開けると思い立ち、現世から浄土への関所を通す役目を果たしたいとして「関通」と名乗られたそうです。
その後、転法輪寺を創建し、桜町天皇の追福のために、高さ約7.5mもの大きな阿弥陀如来座像が造られました。都名所図会には立派な伽藍が描かれていますが、やがて時が経つと北野周辺も賑わう地となってきたため、昭和4年に阿弥陀如来が座すのにふさわしい、より西の地である現在地に移転をしました。移転の際の詳しい記録は残っていないそうですが、台座に乗せて運ぶ際に、嵐電の架線を竹竿で持ち上げながら進んで行ったところ、どうしても1カ所仏様の頭が引っかかる場所があり、架線を切ることで仏様は無事に移動ができたとの話が伝わっています。
寺は通常は非公開で、2017年の早春に修復を終えた大涅槃図の公開が行われて、私もその時に訪れました。今回は「京の冬の旅」で3月18日まで特別公開されており、阿弥陀如来座像に加えて涅槃図も目にすることができます。江戸時代のネコ入り涅槃図ですが、様々な動物たちが泣いている中、ネコは鋭い目つきでネズミを狙っている姿が印象的です。ちなみにネコとネズミの間にいるのはサイで、1本角に硬い皮膚というの想像で書くと、亀の甲羅を乗せた姿になってしまったものです。
阿弥陀如来座像はやはり大変大きく「御室大仏」の名にふさわしい存在感があります。特徴的なのは両肩に衣を掛けた通肩(つうけん)の姿と、頭の後ろの光背に桜町天皇の遺品である鏡がはめられていること。ぜひ、見逃さずにご確認下さい。大仏の前には1.2メートルの巨大な木魚もあり、一木のものとしては日本で2番目の大きさだそう。
お堂の奥に回り込むと、日本で5体という90cmほどの裸形の阿弥陀如来立像も祀られています。寺に伝わる明治期の縁起書では、飛鳥時代に皇極天皇がまだ舒明天皇の皇后だった頃、やっと授かった子が占いによると女の子であると知り、世継ぎである男子であるようにと春日明神に祈ったところ、阿弥陀仏の力によって男の子として生まれ、この男の子がのちの天智天皇になったとの伝承が伝わります。皇子の誕生を喜ばれた皇后が裸形の阿弥陀如来像を刻ませて皇子(天智天皇)の守り本尊とし、後宮で拝んだとされます。寺伝の真偽やなぜ転法輪寺にこの仏様が伝わっているのかという部分はさておき、像は室町時代以前のものとされ、安産・子宝のご利益で信仰を集めています。
ありがたいことに堂内はすべて撮影がOK。また、100円で甘茶とおせんべいの接待も受けられます。開山の関通上人像やゆかりの品々を展示するスペースもあり勉強になりました。公開は3月18日まで600円です。機会がありましたら、足を延ばしてみて下さい。
「京ごよみ手帳2019」訂正のお知らせ
・P39の三十三間堂「楊枝のお加持と大的大会」の日程が1月14日となっていますが、正しくは「1月13日」です。
・P225の「京都御所」のデータで、2番の休みは「月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始・臨時休あり」です。
ご迷惑をおかけいたします。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第14回京都検定1級(合格率2.2%)に最高得点で合格。気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。