奥嵯峨の愛宕念仏寺は、境内に立ち並ぶ千二百羅漢像がユニークです。
愛宕念仏寺(おたぎねんぶつじ)は、奥嵯峨の最奥にあるお寺で、愛宕神社の一の鳥居から先に進み、清滝に向かうトンネルの手前にあります。嵐山から歩くにはなかなかの距離があるので、レンタサイクルかバスで行くのもよいでしょう。境内は、羅漢像で知られ、総数1200躯(く:像の単位)もの石像が境内一円に並んでいます。釈迦の入滅時に集まった500羅漢が有名ですが、その100年後の命日には700人の羅漢が集まったとされ、こちらでは合計1200躯となっています。石像は昭和56(1981)年に全国から制作者を募って作り始められ、平成3(1991)年に完成しました。
愛宕念仏寺は、現在は愛宕山にほど近い場所にありますが、大正11(1922)年までは東山の建仁寺の南、六波羅蜜寺の北付近に境内地がありました。創建は奈良時代という古寺です。愛宕念仏寺の「愛宕」は愛宕山から来ているのではなく、現在の京都市の東半分をかつて占めた古い郡名「愛宕(おたぎ)郡」に由来します。ですので読み方も「あたご」ではなく「おたぎ」となっています。
そして「念仏寺」という名も、かつての地が、古代の葬送地「鳥辺野」の入り口にあったところから来ています。対する嵯峨野には、化野(あだしの)念仏寺があり、もともとの由緒が異なる二つの念仏寺が、現在は近くにあるのも歴史の面白いところでしょう。愛宕念仏寺は現在地に移ってきた後も順調ではなく、一時は復興に失敗して荒廃しましたが、仏像彫刻で著名な西村公朝が住職となり再度復興につとめ、千二百羅漢を発案するなどして、復興にこぎつけています。
本堂は、鎌倉時代の建築で、元は東山に立っていました。京都市街地で鎌倉時代の建物が残っていたことは奇跡的で貴重な建物。国の重要文化財に指定されています。愛宕念仏寺が有名なのは、なんといっても千二百羅漢でしょう。その多彩な表情やポーズは面白く、隅々まで眺めてみたくなります。今回は中でも特に個性的な像の写真を載せてみました。ぜひ現地で様々な姿の像をご覧ください。
「京ごよみ手帳2019」訂正のお知らせ
・P39の三十三間堂「楊枝のお加持と大的大会」の日程が1月14日となっていますが、正しくは「1月13日」です。
・P225の「京都御所」のデータで、2番の休みは「月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始・臨時休あり」です。
ご迷惑をおかけいたします。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第14回京都検定1級(合格率2.2%)に最高得点で合格。気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。