10月20日に野宮神社の斎宮行列が行われ、嵐山や嵯峨一帯を行列が進み、大堰川で禊の儀も行われました。
斎宮行列は縁結びのご利益で知られている野宮神社(ののみやじんじゃ)の行事です。斎宮は、斎王とも呼ばれ、天皇が新たに即位するごとに伊勢神宮(祭神は天照大神)へと遣わされた未婚の皇族女性(内親王・女王)のこと。天皇家の祖先は天照大神で、その神のために奉仕する役割をになうのが、斎宮だとされています。「斎」には「潔斎して神に仕える」という意味があります。
この風習は飛鳥時代の天武天皇の頃にはすでに確立されており、南北朝時代の後醍醐天皇の頃まで およそ660年間、64人の姫君が遣わされていたと言い伝えられています。なお、伊勢で奉仕する施設のことも斎宮と呼びます。また、賀茂の神に奉仕する皇女もおり、こちらは斎院と呼ばれています。そして斎宮と斎院を総称して「斎王」と呼び、葵祭の主役とされるのが斎王代は、斎王(斎院)の代理という意味になります。つまり、この斎宮行列でも斎王代と呼んでもよいのですが、区別するため「斎宮代」と呼ばれ、行列名も斎宮行列となっています。(ただ三重県のお祭りは”斎王まつり”となっています。)
野宮神社はその斎宮が伊勢神宮へ向かう前に身を清める、精進潔斎の場所だったとされる神社です。皇女はまず宮中の初斎院(しょさいいん)で潔斎し、さらに野宮でもう1年潔斎をしたと言われています。野宮は新たな斎王が選ばれる度に占いで決められた嵯峨野の各所に置かれ、一代で壊すことがならわしであったとされています。すなわち源氏物語の賢木の巻に描かれている野宮も、現在の野宮神社の場所であったかは定かではないのです。なお、賀茂社に仕える斎王(斎院)が潔斎にこもった場所は、西陣にある櫟谷七野神社(いちいだにななのじんじゃ)にあったとされています。
行列は、野宮神社での神事の後、竹林を通って出発します。往時は野宮を出て伊勢神宮に着くまで5泊6日もかかる長旅でした。今でも行列が竹林を抜けてくる様は往事を思わせる雰囲気があります。やはりメインは斎宮代。十二単(ひとえ)のお姿はたいへん美しく見えます。嵯峨嵐山駅前では牛車が待機して列に加わります。
列はその後、天龍寺前を経て渡月橋へと向かい、中の島で記念撮影を行います。今年はドローンでの撮影も行われていました。その後、今年は見ていませんが、渡月橋を再び渡った一行は、大堰川で禊(みそぎ)の儀を行います。葵祭の斎王代は賀茂社の御手洗川(みたらしがわ)で行いますが、同様の清めの行事を斎宮代も行います。斎宮行列は行程は短いながらも列が美しく、斎宮代の気品も葵祭の斎王代に引けを取りません。毎年10月の第3日曜日に行われますので、機会がありましたらご覧ください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。