針供養は使い古した針をコンニャクに刺し、供養する行事です。12月8日は「事納め」とも呼ばれ、農耕の作業はこの日に終えて無事を祝う習わしがありました。農民たちは普段は昼間は農耕に、夜には針仕事に精を出していましたが、この日ばかりは夜の針仕事もお休みをするため、そこから針供養の風習が生まれて行きました。現代では家庭で針仕事を行う頻度は少なくなりましたが、服飾関係を中心に現在も根付いている行事です。
法輪寺の針供養は、13時から本堂の中で行われますが、一般の方が本堂に入れるのはその直前で多くの方が外で待っていました。本堂には関係者も多く来られており、境内は人でぎっしりです。時間になると粛々と法要が進められ、途中、技芸上達の守護仏である本尊・虚空蔵(こくうぞう)菩薩の前で4名の織姫による優雅な舞も奉納されました。
法要が終わると、人びとがコンニャクに針を刺していきます。刺す針は持参するものではなく、法輪寺にて用意されているもの。とても長く27cmもあるそうです。コンニャクは二段重ねになっていて、こちらも特注の大きなものでした。人びとはこの大きなコンニャクに五色糸が付いた長い針を刺し、手を合わせて針への感謝と技芸上達を祈願しました。
私も針をコンニャクに刺してみましたが、この大きなコンニャクが驚くほど柔らかく、全く刺しているという感覚がないほどスーッと入って行きました。これほどまでに柔らかければ、きっと針も供養されていることでしょう。五色糸が付いた多くの針がコンニャクに刺さっている様子も美しく、見栄えが良いものです。
なお、針供養は法輪寺に限らず各地で行われており、京都では岩倉の幡枝八幡宮の中にある「針神社」でも針供養が行われていました。この日は既に神事が終わった後でしたが訪れてみると、神社の前にはコンニャクが置かれていて、参拝者の方が持参した針を刺しておられました。こちらは地元で親しまれている行事のようです。法輪寺でも針を納めることができ、本堂前に箱が設けられています。法輪寺の針供養は2月8日にも行われますが、この日は農耕を始める日とされています。2月8日は舞はありませんが、よければ訪れてみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。