松尾大社 節分祭の石見神楽


2月3日午前には松尾大社の節分祭で石見神楽の奉納がありました。

松尾大社の節分行事も盛大に行われています。午前中は石見神楽の奉納、午後には鬼の舞、そして豆まき。私は直接見たことはありませんが、豆まきでは福餅やミカンも撒かれ、数は大変多いようです。午前中の石見神楽は、八岐大蛇(やまたのおろち)の演出が有名で、京都では祇園祭の宵山の日に八坂神社で奉納されるものが知られています。また、10月の粟田神社のお祭りでも、京都造形芸大の学生による石見神楽が奉納されています。

松尾大社の石見神楽は、八坂神社とは奉納される団体が異なり、島根県益田市の種神楽保存会の皆様によるものです。「石見」とは、京都では「山城」や「丹波」のような島根県西部の古い国名で、「出雲」の西にある国です。気象的にいえば、出雲と石見はこの時期明確に差が出ます。出雲国はその名の通り雲が湧いて雪をドンドン降らせますが、すぐ隣の石見国では雪や雲が劇的に少なくなって、石(岩)が見える国なのです。実は私の大学の卒業論文は「出雲国に雲は出たのか?」を、観測データなどを元に気象的・地理的に考察したものです。機会があればどこかでご紹介しましょう。

話を戻します。石見神楽はその島根県西部に伝わるお神楽で、曲は非常にテンポがよく、そしてエンターテイメント性の高い「劇」ともいえるものです。動きの機敏さと踊りの軽快さ、そして所作の美しさは、目の前で見ていると感動を覚えます。今回は、最前列を確保すべく1時間ほど前に並びました。舞殿で行われますので、少し後ろからでも十分見ることはできます。平日ならば混雑もほどほどです。

最初の演目は塩祓(しおはらい)。この演目は「四方祓い」ともいわれるように、四方の神々をお集めし、舞座を清める儀式です。神様に二礼二拍手で参拝する動きもありますよ。どの演目の衣装もたいへんきらびやかで、舞うたびにひらめく姿はとてもカッコいいですね!

次の演目は八幡(はちまん)。かつて九州は豊前(ぶぜん)の国で、第六天魔王が人々に害をなしていましたが、宇佐八幡の神である八幡麻呂(やはたまろ)は、­自ら出向いて神通の弓(じんつうのゆみ)と方便の矢(ほうべんのや)で退治をするという演目です。

三つ目は塵輪(じんりん) 。仲哀天皇の時代、外国より数万の大軍が日本に攻めてきました。中でも塵輪という翼を持った大悪­鬼が黒い雲に乗って空を飛び、多くの人々を苦しめていました。天皇は高麻呂(たかまろ)をはじめとする兵を連れ、自ら天の鹿児弓(あめのかごゆみ)、天の羽々矢(あまのは­ばや)を持って、この大悪鬼を退治します。面をつけていないのが高麻呂です。また、演目最後では仲哀天皇も面を外して舞うところも注目です。

最後は、石見神楽の代表的な演目、大蛇(おろち)です。八岐大蛇とも言います。スサノオノミコトが出雲の国・斐伊川にさしかかると、嘆き悲しむ老夫婦と稲田姫に出会いました。理由を­尋ねると、ヤマタノオロチが毎年現れて、既に七人の娘がさらわれ、残った稲田姫もやがてその大蛇にさらわれてしまうと言います。一計を案じたスサノオは、種々の木の実で醸し­た毒酒を飲ませ、酔ったところを退治します。この演目では何といっても、大蛇の動きが注目です。そこで生きているかのような動きをしますので、驚きますよ。そして最後はなんと、スバっといかれてしまいます!

さて、大変見事な演目ばかりでした。石見神楽には他にも数多くの演目があり、いずれ機会を得てじっくり見てみたいと思います。4つの演目でおよそ2時間。それぞれの演目も実際には動画よりもはるかに長いです。演奏される地方さんや激しく舞われている方々も相当に疲れるのではないかと思います。しかし、それだけ完成度が高く、目の前で見るとさらに面白いものですので、機会がありましたら是非生でご覧になって下さい!

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

より大きな地図で 松尾大社の石見神楽 を表示

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