松尾大社 石庭とあじさい苑


松尾大社にも多くの紫陽花が咲いています。松風苑の庭は重森三玲の最晩年の作庭で、特徴的な石の庭を楽しむことが出来ます。

松尾大社は京都では賀茂社と並ぶ古社で、付近に勢力を広げた秦氏ゆかりの神社です。現在も社殿北西の松尾山には盤座(いわくら)があって、神の依代として信仰を集めています。京都の守り神として一条天皇以来の歴代の天皇の行幸もあり、酒の神としても知られる神社です。松風園や神像館は有料ですが、一見の価値があります。珍しいのは神像で、神にはもともと姿かたちはありませんが、形ある仏像を持つ仏教の影響から「神像」が作られるようになりました。松尾大社では平安初期の等身大の男神像・女神像を間近で眺めることが出来ます。その見事な姿は千年前の像とは思えないほどです。

松風園の庭は昭和を代表する作庭家の一人、重森三玲が手掛けています。独特な石使いが印象的なお庭は一度見ると記憶に残りやすいことでしょう。京都では東福寺やその塔頭の庭が有名で、他には大徳寺の瑞峯院、泉涌寺内の善能寺や出水通の光清寺など、あまり知られていないものもあります。松尾大社は最晩年のお庭で、四国産の緑石(緑泥片岩)を使用して、盤座をモチーフにした上古の庭、奈良・平安期の曲水をモチーフにした曲水の庭、鎌倉期の回遊式庭園や蓬莱思想を取り入れた蓬莱の庭、計画外に作られた即興の庭とがあります。それぞれ印象が異なりつつも斬新な石使いは共通しています。ファンは十分に楽しめることでしょう。

あじさい苑は上古の庭の脇を登って行った先に広がっています。鎮座1300年を記念して計画され、2005年から公開されているそう。紫陽花が咲く時期も拝観料は普段と変わりませんので、お得といえばお得かもしれません。約30品種1000株があるそうで、なかなか見ごたえがあります。まだまだ小ぶりな木も多いですが、じっくりと年月をかけて立派に育っていくのでしょう。あじさい苑の頂上部には「心願盃(さかずき)投げ」ができる場所もありましたが、この日は置いてあるはずの肝心の盃が無くなっていて、試すことができませんでした。

松尾大社のあじさい苑は「紫陽花の森」といった印象です。善峯寺や三室戸寺などは綺麗に手入れがされて「お庭」という感じがしますが、松尾大社はより自然に植えられているように見えました。紫陽花以外の木々も茂る斜面に咲く紫陽花の森は、探検のしがいがあります。もっと子どもだったら喜んで階段を駆け上がったことでしょう(笑)あじさい苑の公開は7月10日まで。まだまだ見頃は続きます。

また、松尾大社の神の使いは鯉と亀。松尾の神が保津川を遡る際、急流では鯉に、緩やかな場所では亀に乗って進まれたとされるところから神の使いとなりました。このたび、6月11日に「幸運の撫で亀」「幸運の双鯉(そうり)」が本殿正面門の左右両側に奉納されました。いずれも触れて願かけをするものです。亀は不老長寿、鯉は出世開運の守護として崇められ、像はまだピカピカですので、ご利益を授かりやすいかもしれませんね。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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