愛宕神社 千日詣り 人長の舞


愛宕神社千日詣り。今回は先日のブログの続きで、人長の舞などの様子を動画でご紹介します。

清滝に到着後、表参道を登っていきます。道中は電球の明かりで照らされ懐中電燈が無くとも大丈夫ですが、あればより安心ではあります。片道およそ2時間の道のりです。千日詣りには伝統的な声のかけ合いがあり、登っていく方は下っていく方に対して「お下りやす」と声をかけ、下っていく方は反対に「お登りやす」と声をかけて行きます。京言葉らしく「やす」がつく昔ながらの言葉ですね。こうして各々険しい道のりを励ましながら登っていくのです。

今年は梅雨の終わりに京都でも激しく雨が降り、愛宕山の参道が崩れる被害が出ました。5合目付近では崩れた土砂により道幅が狭くなり、7合目の休憩所も傾いて危険なために撤去されました。5合目は景色のよい場所でもあるのですが、基本的には交互通行で立ち止まっての写真撮影は禁止となりました。また、愛宕山中の月輪寺も権現堂が土砂に埋まるなどの被害を受けました。山はこうした土砂災害を受けやすく、天気の急変にも十分な注意が必要です。この日は天気にも恵まれ、京都の夜景も美しく見ることが出来ました。山登りをされている方を除けば、愛宕山に夜に登れる機会も千日詣りの時くらい。こうして美しい光景に出会えるのもラッキーですね。

私は23時半頃に登り始めて予定通り午前1時半ころに境内に到着。実は愛宕神社の本殿へはそこから厳しい傾斜の階段を登りつめねばならず、最後の力を振り絞ります。無事に午前2時からの朝御饌祭(あさみけさい)には間に合いました。朝御饌祭では神に神饌を奉納し「人長の舞(にんじょうのまい)」も披露されます。また、小さな火を焚き、その火を消す独特の鎮火神事も行われます。この鎮火神事をきちんと見るには本殿前の席の最前列に座らないと難しく、事前の場所取りが必須です。人長の舞は席に座れれば見ることが出来ますが、席の数が多くありませんのでこちらも十分に早く行って場所を確保するのが賢明。私が登頂したのは午前1時40分頃で、半ば諦めていましたが、奇跡的に席の空きを一つ見つけ、近くで見ることが出来ました。

人長の舞は、とても優雅な舞です。人長とは宮中で神楽を舞う舞人の長のことで、ここでは武官の装束を身につけて舞を舞います。手に持つ榊には丸い木製の輪がついていますが、これは三種の神器の一つの神鏡を表しています。舞にあわせて一音一音を長く延ばしながら歌が歌われているのも印象的。今回の舞で歌われたかは定かではありませんが、人長の舞には「其駒(そのこま)」という名の歌があります。「其駒ぞや 我に我に草乞ふ 草は取り飼はん 水は取り 草は取り飼はん」。駒(馬)が草を乞い、その馬に草を与え水を与えといった意味の不思議な歌。古来宮中で舞われていた当時からこうした内容の歌だったのでしょうか。深夜に加え登山の疲れもあって、雅楽の音色や歌に包まれた優雅な舞を見ていると、意識が遠のきタイムスリップして行くような感覚も味わいました(笑)

さて、山頂は大勢の方で賑わっていて、境内では寝袋やシートを持ちこんで仮眠をとる方も大勢いました。千日詣りの日に限らず、また自力他力を問わず、3歳までに愛宕神社に参拝すれば一生火難に合わないとされ、小さな子どもを連れた家族も見かけます。

気温は午前3時で21℃と、思っていたほど低くはありませんでしたが、それでもきちんと長袖や着替えを持ってくる必要があります。また夜の山の上は風が強いのが特徴です。平地の風は昼に強く夜は弱まるのがセオリーですが、山は反対で、昼に弱まり夜に強まるのがセオリー。これは昼間は地上付近が暖められて上空の風が下りてくるためで、夜は上空に戻った風が、愛宕山頂のような付き出た場所に意外に強い風を吹かせるのです。つまり、麓は静かでも山頂が近付く程に風が強まり、汗で濡れた衣服を冷やして体力を奪います。きちんとした準備をして山には臨んで下さい。

朝御饌祭は午前3時前に終わり、そこから境内を少し歩いて下山をすると午前5時ころに清滝に下りてくることができます。バスの運行は午前5時半からの予定ですが、少し早めに動きだしていました。私は最後はバスに乗らずに試峠を歩いて鳥居元まで戻ってきました。まさに徹夜での登山。麓に下りるころには空は明るくなり、もちろん体の疲労は相当ですが、気持ちは清々しい。鳥居元からは自転車で広沢池を経て帰途に着きます。朝日に照らされる嵐山や愛宕山はまさに輝いていました。やはり嵐山や西山は朝が、東山は夕方がそれぞれ太陽のスポットライトを浴びて美しい時間帯。千日詣りのおまけともいえる光景でした。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。


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