岩船寺の創立は奈良時代にまでさかのぼり、寺伝によると聖武天皇の発願で行基による開創といわれ、最盛期には広大な境内に39の坊舎がありました。しかし承久の乱で大半が焼失し、再興されたお堂も再度の兵火によって徐々に衰えて、江戸時代初期には十棟程度まで減ってしまいます。その後、庶民から寄付を集める僧が現れたり徳川氏の寄進によって本堂や本尊の修復がなされて復興。その再び荒れますが、昭和18年に三重塔が修理され、本堂は昭和63年に落慶しました。
境内で目を引くのは、朱色が鮮やかな三重塔。室町時代に建てられたもので、東山の八坂の塔(1440年)とほぼ同時期の1442年の建立です。2003年に大修復が完了し、往時の色彩を取り戻しました。山中に佇む姿が美しく、緑の時期も朱色が映えて美しいです。岩船寺の三重塔は、なんと周りの高い場所から、二層目・三層目と同じくらいの目線で見られてしまうという特徴もあります。こうして塔を少し高い場所から間近で見られる場所はなかなかありませんので、貴重なロケーション。塔の屋根を支えている天邪気(あまのじゃく)の頑張りも近くで見られます。
岩船寺はアジサイの名所としても知られます。山中にたたずむ門をくぐれば、そこは華やかな別世界。何度も訪れている岩船寺ですが、実はアジサイの時期は初めてで、とても感動させていただきました。岩船寺は関西花の寺のひとつにも数えられており、アジサイの時期はまさに旬。石仏巡りや浄瑠璃寺と併せて足を延ばしてみて頂きたい場所です。
岩船寺のご本尊は平安時代の丈六の阿弥陀如来で、平等院より107年も古いものです。周りを四天王が囲み、荘厳な雰囲気のある仏様。本堂内部はぐるりと回ることができ、裏側の十二神将を始め数々の仏像を比較的近くで、ゆっくりと眺められるのがこのお寺の特徴です。お寺へは行きにくいのが難点ですが、JRや近鉄の奈良駅やJR加茂駅からバスで向かうのが行きやすいでしょう。バスは1時間に1本くらいですので事前にバスの時間をお調べください。また浄瑠璃寺から岩船寺は結構な登坂ですので、下りになるように先に岩船寺にバスで向かうことをお勧めします。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。