京都 夜の節分行事


2月3日の節分。夜にも各地で節分行事が行われました。滝尾神社では華やかな着物姿や、芸妓さんも登場する豆まきがありました。

京都の節分行事、主だったものは3日午後に行われていますが、夜に行われるところもあります。概して夜の節分行事は観光目的の方がほとんどいなくなるため、地元密着型の行事となります。昨年は、光と音の演出がショーのようで地元でも大人気の藤森神社の節分祭をお伝えしましたが、今年は滝尾神社の節分祭へお邪魔してきました。滝尾神社は東福寺駅から少し北へ行った場所にあります。滝尾神社の節分祭も地元主体の行事ですが、なんと宝恵かごが登場したり、芸妓さんが来られたり、地元の女性が美しい着物を着て豆まきを行うなど華やかです。他のブログでは、着物の女性たちは五人官女と書かれていました。

実は、私は滝尾神社の前に吉祥院天満宮にも寄っていたため、滝尾神社には豆まきの直前に到着しました(吉祥院天満宮の鳴釜神事は後日ご紹介します)。町内の方によると、今年は例年よりも豆まきの時間を早めたそうで、来年以降も他のブログの情報とは時間が異なるかもしれません。さて、滝尾神社の節分は地元主体と申しましたが、撒かれる豆には「くじ」も付いているため、地元の方優先で豆は譲る方がよいでしょう。

滝尾神社でもかなりの量が撒かれますが、この日見てきた4か所の豆まきの中では最も激しかったです。「くじ」が付いているのがやはり大きいのか、押し合いへしあいといった凄まじさでした。私も途中から写真を撮るどころではなくなり、身とカメラの安全確保に必死でした(結果的に鞄にいくつか豆と餅が入っていました)。豆まきが終わると、豆に書かれている番号に応じて、生活用品や抽選でお米や自転車も当たります。地元主体とあって生活に役立つ景品ばかりでした。また、豆まきに参加された芸妓さんも、気さくに写真に応じてくれました。藤森神社もそうでしたが、こうして堅苦しくなく、和気あいあいとした雰囲気の節分もよいですね。

さて、この日は文子天満宮の節分祭にも参列してきました。文子天満宮は、道真の乳母・多治比文子が道真を祀ったのが始まりという神社です。北野の地に道真を祀れという託宣を受けた「多治比文子」という人物は、この乳母の多治比文子ともいわれています(ただ、道真は845年に生まれ、北野に祀る託宣があったのは942年のこと。乳が出る年齢を仮に15歳とすると、「乳母の多治比文子」は、託宣のあった年にはすでに110歳を超えているはずで、託宣を受けた多治比文子と、乳母の多治比文子が同一人物とは言えないとする説もあることを付け加えておきます)。こちらの節分祭は、私も入れて参列者は5名のみ。まさに地元のために行われていて、派手な豆まきもなく、粛々と神事が執り行われていきました。

神事が終わると、神社の方から甘酒の接待があり、福豆も手渡して頂けました。実は、部外者の私はたまたま前を通りかかって節分祭の看板を見かけて参列したので、若干気が引けましたが、神社としてはどなたが参列されても構わないようでした。しんしんと冷える夜に体が温まる甘酒を頂きつつ、神職の方が地元の方と昔話をされるのを聞きながら、あぁこれが本来の節分祭なのだろうなと感じました。しばらくして、今年生まれたばかりというお子さんを抱いた夫婦が参拝に来られ、神職としばらく話し込んで、福豆を頂き帰って行きました。有名社寺の観光化された節分行事の陰に隠れて、こうして本当に地元の方のための行事もまだ京都には残されています。

文子天満宮を後にして、ふと我が家に一番近い神社、高松神明神社に参拝しておこうと思い、最後に寄ってみました。豆まきの時間は過ぎていて境内には誰もいませんでしたが、静かに新しい季節の無事を願わせて頂きました。そのまま帰ろうとしたところ、たまたま神社の方と顔を合わせ、まだ豆まきの豆が余っているから、と福豆を手渡して頂きました。ありがとうございます。この高松神明神社も非常に由緒の深い神社なのですが、それ以前に神社もお寺も地元の方のためにあるものなのでしょう。この日は、伏見稲荷から始まって、天龍寺、廬山寺と賑わしかったですが、最後にこうして静かに「京都の節分」を感じられたのが、今年の最大の収穫かもしれません。また、来年以降も、各地の節分行事を見て回りたいと思います。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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