岩船寺から石仏巡りの道を経て浄瑠璃寺に行くコースはおすすめ。人気の「笑い仏」など、いくつかの石仏と出会う道は下り坂。一部急な部分もありますが、基本的にはのどかな風景を楽しめる道が続くため、都会の喧騒とは別世界を感じられることでしょう。この日も、歩いている方々を数組お見かけしました。
浄瑠璃寺の創建には不明な点が多いですが、平安時代末期に末法思想が流行った時期に建てられたと考えられています。国宝の阿弥陀堂は、当時京都に多数建てられた九体阿弥陀堂の唯一の遺構で、堂内には人が極楽往生に至る9つの段階に応じた9体の阿弥陀如来像が、今も金色の輝きで残されています。約1000年前の仏様が、恐らく当時と変わらぬ並びで目の前に残っているという歴史の深さ。何度足を延ばしても感動させて頂きます。
庭園は浄土思想を取り入れており、西に阿弥陀堂、東に薬師如来を祀る朱色の美しい三重塔があります。もともと寺の創建時の本尊は薬師如来と考えられており、薬師如来の浄土である薬師瑠璃光浄土から、寺は浄瑠璃寺と呼ばれました。薬師如来は、病といった現世の苦しみを除き、阿弥陀如来は来世で極楽浄土に導いて下さる仏様。当時の人々の信仰が目に見える形で現れたお寺といえるでしょう。
浄瑠璃寺の庭園は実は全国でもたった36カ所しかない「特別名勝」に指定されている貴重なお庭。境内で有料なのは阿弥陀堂の拝観のみで、お庭は自由に歩かせていただくことができます。風景が殊のほか美しいという特別名勝のお庭の眺め。往時は、阿弥陀堂の扉が開き、池に映る阿弥陀様のお姿に手を合わせたと聞きます。そんなことを思いながら、ゆっくりと歩かせていただきました。浄瑠璃寺へは、加茂駅からのバスのほか、JR奈良駅・近鉄奈良駅からのバスもあります。浄瑠璃寺は地域柄、奈良とのつながりも深いため、そちらから訪れてもよいでしょう。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。