善法律寺の紅葉と室戸台風の悲劇を伝える慰霊塔

善法律寺
3日に、八幡市の善法律寺をご案内で訪れました。

善法律寺京都の南にある八幡市(やわたし)の中で、紅葉が美しい場所として知られているのが、善法律寺。京都検定のテキストにも紅葉の名所として記述があります。寺を創始した善法寺宮清のひ孫・良子が足利義満の母で、義満は二十数度訪れたと伝わります。良子は紅葉を好み、寺にはカエデが植えられたとされます。現在も確かに紅葉が見事で、京都らしい風情を見せてくれます。寺には石清水八幡宮の旧本尊である八幡大菩薩像をはじめとする貴重な仏像が移されており、事前予約で拝観も可能です。

善法律寺さて、善法律寺の境内には地蔵尊(あるいは八幡大菩薩像?)の姿が印象的な慰霊塔が建っています。台座には、昭和9年9月21日の室戸台風によって亡くなった生徒たちの名前が刻まれており、気象予報士としては手を合わさずにはいられない慰霊塔です。室戸台風はそのすさまじい暴風もさることながら、通過速度が非常に速く、わずかの時間で急激に風が強まったという特徴があります。折悪く、生徒の登校時間帯にはまだ学校へ行けるくらいの風速だったものが、学校に着くころには激烈な暴風となり、当時の木造校舎は軒並み倒壊。数多くの生徒や先生が下敷きとなって亡くなりました。

善法律寺風は風速の数字が2倍になれば圧力が「2乗」になるという法則があります。つまり風速の増加は、圧力が急激に強まることを意味し、風は想像以上に一気に恐ろしくなります。室戸台風の当時は、現在のように警報の周知が徹底されていない時代でしたので、近畿一円でこのような悲劇が起こり、この地蔵の慰霊塔には八幡尋常高等小学校の倒壊によって亡くなった数多くの生徒の名前が刻まれているのです。京都では善法律寺以外にも何か所かで、室戸台風の悲劇を今に伝えるところがあります。

善法律寺この慰霊塔には今でも毎年9月21日、八幡小学校の教員・生徒が花を手向けていて、当時被害に遭いながらも生き残った方もこの日に参拝されるそう。室戸台風の教訓は今に伝わっています。境内の紅葉は終盤ではありましたが、一部はまだ美しく、日差しに輝く様はたいへん見事。ちょうど慰霊塔の地蔵尊を背景に彩っていました。境内を訪れる際には、紅葉を愛でながらこの慰霊塔にも目を向けて頂ければと思います。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。

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