大徳寺の総見院が特別公開されています。天正10(1582)年、本能寺の変の百日後に、秀吉が大徳寺で織田信長の葬儀を行ったとされ、翌年一周忌に間に合うように創建したのが総見院です。開祖は古渓宗陳(こけいそうちん)。境内には信長とその一族の墓があり、正門や鐘楼、土塀の一部は創建当時のものです。
古渓宗陳は大徳寺の第117世の住職で、千利休が禅の師と仰いだ人物。利休が切腹を命じられ、その首が一条戻り橋に晒された際に、古渓は闇夜に紛れて秘かに首を持ち帰り、手厚く供養したとも伝わります。表千家の茶室「不審菴」の名は、利休が禅の師でもある古渓から授かった「不審花開今日春(不審にして花開く今日の春)」という禅語から名付けられています。
本堂に祀られている信長の木像は、信長の葬儀の際に秀吉が同じ姿の像を2体作らせたうちの1体で、もう1体は葬儀の際に火葬されました。その像は香木で作られたため辺りに芳香が漂い、秀吉こそが信長の後継者であることを都の人々に示したともいいます。総見院には秀吉が愛した侘助椿(わびすけつばき)や、加藤清正が朝鮮から持ち帰った石を用いた井戸も伝わり、戦国ファンにはたまらないお寺でしょう。11月30日まで公開されています。
大徳寺では黄梅院や興臨院も12月はじめまで公開中。さらに11月10日からは、修復中だった高桐院が拝観を再開します。今年は紅葉シーズンに美しい光景を目にできることでしょう。私も時間を作って訪れてみたいと思います。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。