岩倉実相院 美しき「雪化床」


18日の京都の雪。床みどりや床もみじで知られる岩倉実相院では、その名も雪化床(ゆきげしょう)を見ることができました。

まず最初に、岩倉実相院の床みどりや床もみじ、そして雪化床は写真撮影ができません。ですので今回は写真はありませんが、実相院さんのブログにはその美しい光景が載っていました。床みどりや床もみじは、ピカピカに磨かれた床に外の楓の色が輪郭をぼかしながら映りこむもので、春から秋はエメラルドグリーンの「床みどり」が非常に見事。さらに晩秋には真っ赤に燃える「床もみじ」へと移り変わっていきます。いずれも芸術的な美しさで、「床もみじ」の名付け親はタクシーの運転手さんなのだそうです。昨年秋の報道ステーションの紅葉特集では、この「床もみじ」が紹介されていましたので、ご存知の方も多いかもしれません。ちなみに床のある部屋は「滝の間」と呼ばれています。

その番外編とも言えるのが、雪の日限定で見られる「雪化床(ゆきげしょう)」。葉が散った楓の枝に雪が積もり、床には白く映り込むのです。これは条件が整わないと見ることが難しく、まさに空からの贈り物とでもいうべき美しさ。雪が積もった後でも晴れて気温が上がってくると、木から雪が溶け落ちてしまうため、雪の日の午前中に行かれるのがよいでしょう。それにしても、光沢を持つ床の黒さと雪の白さのコントラストが素晴らしい。写真を撮れないのが残念すぎると思えるほどでした。

実相院の雪景色は趣があります。入口の門を入ってすぐには低くまで枝を伸ばした楓の木。白く線が延びたように雪が積もり、門からは額縁の絵のように見えました。実は、私が訪れた時間帯は他に誰も拝観しておらず、境内の美しい風景や、「雪化床(ゆきげしょう)」もじっくりと眺めることができました。まだそれほど存在が知られていないのかもしれません。日当たりのよい枯山水のお庭は、砂に引かれた線に沿って雪が残っていました。不思議ですね。枯山水の庭は本格的に雪が積もると埋まってしまい、本来の趣が損なわれることも多いため、うっすら程度がちょうどよいかもしれません。

実相院は客殿の襖などに描かれた狩野派によるとされる、数々の絵画も見事です。この客殿は、上皇の妻である皇太后の女院御所である「大宮御所」の一部を下賜されたもので、歴史的にも大変貴重な建物です。実相院は天台宗の門跡寺院としての歴史を持ち、応仁の乱の戦禍を避けて岩倉に移ってきました。皇族や摂関家らがしばしば住持に就き、高い格式を持っています。

しかし、門跡寺院であるがゆえに、庶民の寺とは異なって檀家を持ちません、さらに現在は単立寺院となっているため、宗派からの援助もないそうです。つまり、客殿の維持管理や修復は、拝観料のみによって賄われています。貴重な建物や絵画も傷みが進んでいるところもあり、実相院では寄付も募っておられます。実相院へは、地下鉄の国際会館駅からバスで行けば目の前で、比較的行きやすいですので、是非、雪の日にも積極的に足を運んでみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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