上賀茂神社の東にある大田神社のカキツバタ(杜若)の見頃が続いています。
上賀茂神社の境外摂社の大田神社。今の時期はカキツバタが咲き、その数は2万5千株ともいわれます。カキツバタが咲く大田の沢は「雲ヶ畑の池と底が繋がっていて水が枯れたことがない」といわれるように、今でも水が絶えない場所で(井戸水で補給しているとは聞きます)、平安時代からカキツバタが世代をつないでいるとされ、国の天然記念物にも指定されています。しかしその維持・保全には毎年多額の費用がかかるそう。未来にもこの美しい光景を届けるために、300円程の志納金を入れる場所が設けられています。
カキツバタは1株で3回ほど花を咲かせ、トータルの花期も比較的長い花です。今は、一面に涼やかで清楚な青を見せてくれています。葉の鮮やかな緑とも相まって、その清涼感は本当に見事。藤原俊成が「神山(こうやま)や 大田の沢の杜若 深き頼みは 色に見ゆらむ」と詠んだカキツバタ。色は恋愛(いろ)にもつながり、澄みきった杜若の青い色に、一途な思いを重ねています。こうして同じ場所で同じ杜若を見られるのは、本当に価値あることですね。
実は一昨年から花の数が減り、昨年は例年の2割程度しか咲かず、しかもシカの食害だけでなく原因が不明という状況で、絶滅が危惧されていました。今年はどうなってしまうのか大いに心配をしていましたが、まだ隙間はありますがずいぶんと花の数が戻ってきた印象。多くの方の努力がきっとあったのでしょう。見事に咲く花を目にできて、一安心しました。花は今しばらく楽しめますので、よければ足を延ばしてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。