信仰の地 狸谷山不動院の雪


今回は雪の狸谷山不動院です。

狸谷山不動院といえば交通安全のご利益で知られ、京都では車に貼られているオレンジ色ステッカーの御守りをよく見かけます。狸谷山不動院はその「狸」の名前がユニークで、関西でも知られた存在。観光寺院ではありませんが、広く信仰を集めている場所です。ただ、その場所への道のりはなかなか険しく、詩仙堂前の急な坂道を上ると、まずは駐車場に到着。車の祈祷はここで行って頂けます。

しかし、本堂はまだ先で、駐車場からさらに道を奥に進むと階段が登場してきます。本堂まで250段の険しい道のりなのです。こうした立地からなかなか本堂まで訪れる機会は少ない場所ですが、地元では健康階段として親しまれ、本堂にある無料の「健康カード」に上ったことを証明するスタンプを押し、10個たまると「健康の証」を授与して頂けます。

また、境内にはその名にちなんで数々の狸の置物が奉納され、特に階段登り口に集中しています。この登り口には阪神タイガースの優勝記念碑も立っています。狸谷山不動院の狸は「他抜き」とも書け、この階段とも合わさって特にスポーツ関係者からの信仰が厚く、阪神では故・小林繁さんがお百度参りをし、さらには特別に宮本武蔵修行の滝に打たれ、護摩行まで行ったことでも知られます。他にも阪神の吉田義男さんが奉納した石碑や、2003年に優勝した際に星野さんが奉納した記念碑も堂々と階段下で迎えてくれます(2022年現在はありません)。

狸谷山不動院は、桓武天皇の勅願で平安京の鬼門の守りとして創建されたと伝わり、狸という字は鬼門から入り込む悪鬼を叱る「咤怒鬼(たぬき)」とも書かれ、咤怒鬼不動明王として信仰を集めました。以後修行場として各時代の記録が残りますが、明治期に一時衰退。その後、地元有志の方によって再興され現在に至っています。ご利益は交通安全に加え、ガン封じが特に有名で、悪鬼退散のイメージから来ていると思われます。1月28日の初不動では、ガン封じの笹酒接待があり、多くの方で賑わい、7月28日には護摩の残り火の上を素足で渡る火渡り祭でも知られています。

さて、雪の日の境内はやはり足もとが危ないです。大した雪の量では無かったものの、かなり滑りやすく、手すりの保険は必須です。特に恐ろしいのが下り。十分に注意をして階段の上り下りをして下さい。階段をひとまず登ると、広場に出ます。ここは護摩を焚く場所でもありますが、懸造りの本堂が目を引きます。山岳の修行地にはこうした崖にせり出す作り建物の作りが見られますね。

京都の山沿いは不動信仰・弘法大師信仰が強く残っていて、ガイドブックにはまず載りませんが、数々の修行場が点在しています。鹿ケ谷から登れば波切不動尊、一乗寺には狸谷山不動尊、南禅寺の最勝院も奥の院まで行けば明らかな行場ですし、清水寺の音羽の滝もお不動さんが祀られ、南は稲荷の行場が広がります。西では、衣笠にも波切不動寺、不思議不動院があり、京都の山沿いは今も行場だらけ。狸谷山不動尊にも、宮本武蔵が打たれたという滝があり、境内では強い信仰の雰囲気を感じ取ることができるでしょう。

本堂まで登れば本尊のお不動さんを拝め、扇形に市街の眺望も望めます。本堂前の柱には病気予防・ガン封じの「願掛けふだ」がびっしりとかけられていて、神仏にすがる人々の思いを感じられることでしょう。交通の便があまり良くない場所こそご利益も強いと考えられているのかもしれません。信仰の地、狸谷山不動尊。機会がありましたら、足を延ばしてみて下さい。なお、境内には「トイレの神様」も祀られています。京都では狸谷山不動院に限らず、所々で祀られていますので、機会がありましたら別途取り上げたいと思います。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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