五山送り火 大文字と十六夜の月


大文字と十六夜の月

8月16日は五山送り火がありました。お盆の間に戻ってきた先祖の霊を送る行事です。今年は旧暦7月16日に巡り、短い時間でしたが月と大文字を眺めることができました。

五山送り火 大文字お盆の締めくくりに行われる五山送り火。正確には観光行事ではなく、お盆にお迎えをしたご先祖様の霊「お精霊(しょうらい)さん」が迷わず冥界へと戻れるようにと夜空に灯す祈りの炎です。庶民の信仰心から生まれ、長年受け継がれてきた京都の大切な伝統行事です。五山の中でも最初に炎が灯されるのが東山の「大」で、20時の点火のあと、5分おきに「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」と、各火床が灯っていきます。それぞれの送り火は、その炎が灯る山麓の集落の人々によって維持されています。

五山送り火 妙点火順は現在は最も東にある「大」から最も西の「鳥居形」まで、極楽浄土に向かって順に西へと灯っていくとされますが、昭和30年代は「大」が最後に灯っていました。火床の数も時代ごとに異なっていたり、お盆以外にも灯されるなど、送り火の細かい方法は時代によって変化をしています。

五山送り火 法さて、私は今日の日を何年も前から待っていました。かつての送り火は旧暦7月16日に灯されていましたが、今年は旧暦7月16日がまさに8月16日で同じになるという特別な送り火です。これは2008年以来で、次回は2038年とメトン周期の通りに19年後です。昔の人々同じような体験が出来るはずという、とても貴重な夜です。旧暦は新月が1日で、15日はいわゆる十五夜。16日は十六夜(いざよい)で天文的な満月になることが多い日です(ただし今年は15日が満月です)。いずれにせよ、諸文献によると「送り火が消えた後に十六夜の月が昇ってくる」と書かれていて、そうした光景が見られるはずだと思っていました。

五山送り火 左大文字とはいえ、どうせなら送り火と月を同時に見られないだろうか、そして左大文字も資料として写真を撮っておきたかったので、その二つを満たせる場所として私が選んだのは船岡山でした。かなり早い時間に行き、大文字を眺めることが出来る場所を抑え、いよいよ20時に大文字が点火。曇っていたため月は見られないかと思っていましたが、雲の隙間からほんの短い間だけ月と大文字を同時に目にすることができました。これには本当に感動しました。市内各所でもわずかながら月と大文字を見られた方も多かったようです。

花洛名勝図会 大文字送火月と大文字が同時に描かれているのが、元治元(1864)年刊行『花洛名勝図会』の「如意嶽/大文字送火」です。ひょっこり月が出ています。私は最初この場面と同じような光景が見られたのだと思っていましたが、よくよく考えてみれば『花洛名勝図会』の小田海僊の漢詩が「大字已ニ消テ山色黒シ 一輪ノ秋月寒光ヲ吐ク」となっていたり、延宝4(1676)年刊行の『日次紀事』では「日没するを待て」灯したとの記載があるため、昔は少なくとも現在の20時よりも早く点火をしていたのでしょう。

都名所図会 大文字の送り火確かに今年は旧暦7月16日=新暦8月16日ではありますが、天文的な満月は16日ではなく15日でした。一般的には十六夜のほうが天文的な満月になることが多く、そして月の出は日に日に遅くなります。つまり今年は一般的な年(十六夜が満月の年)より、月は遅く出たことになります。にも関わらず月は大文字と同時に見えたということも、『点火時間が昔はもっと早かった』ことを示しています。なお、20時点火になったのは1963年からだとWikipediaには書かれていました(出典未確認)。また、1957年刊行の緑江叢書では、大文字は他の送り火が灯った後、最後に点火となっていて、点火順番も今とは違っていたようです。

十六夜の月ということで、旧暦7月16日の送り火を実際に経験したことで疑問がわき、昔と共通する部分や異なっている部分を改めて知ることが出来ました。その意味でも今年の送り火は大いに勉強になった夜でした。送り火が消えた後、明るく輝く月の光は本当に綺麗で、ご先祖様は月の慈悲の光に照らされて帰って行くようにも感じます。保存会を始め関係者の皆様、本当にありがとうございました。

「京ごよみ手帳2019」訂正のお知らせ

・P39の三十三間堂「楊枝のお加持と大的大会」の日程が1月14日となっていますが、正しくは「1月13日」です。
・P225の「京都御所」のデータで、2番の休みは「月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始・臨時休あり」です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。


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