西本願寺の唐門が、21日の宗祖降誕会に合わせて1日限定で開かれました。
浄土真宗の祖である親鸞聖人は、承安3(1173)年5月21日に生まれました。西本願寺ではその日を祝う「親鸞聖人降誕会(ごうたんえ)」が行われ、祝賀能の奉納や、飛雲閣でのお茶席などが設けられました。これらの行事は基本的には門徒の方か当日5000円以上の志納金を納めた方に限られていますが、今年は34年ぶりに唐門の扉が開かれ、どなたでもくぐるることができました。
境内南の唐門は桃山時代の豪華な装飾彫刻を充満した檜皮(ひわだ)葺き・唐破風の四脚門で、彫刻の見事さに日の暮れるのを忘れることから、日暮門(ひぐらしもん)とも呼ばれています。西本願寺が現在地に移転した1591年頃の建立とされますが、装飾のほとんどは当初のものではなく、1618年に堀川通から現在地に移築された際に加えられたものと考えられています(1617年の火災で焼け残った本願寺最古の建物とも)。色彩は昭和の修復で復元されました。
日暮門の名に違わず、彫刻は本当に素晴らしく、扉の正面に遊ぶ唐獅子もかわいらしいです。側面の彫刻は、表側は黄石公(こうせきこう)と張良(ちょうりょう)の逸話が、裏側は許由(きょゆう)と巣父(そうほ)の故事が元になってます。特に、潁川(えいせん)の流れで耳を洗う許由の姿は印象的。許由は高潔な人物で、時の皇帝から帝位を譲るといわれました。しかし、許由は政治や権力が嫌いであったため申し出を断り、さらに潁川のほとりにおもむくと「汚らわしいことを聞いた」と、その流れで自分の耳をすすいだといいます。
牛を連れた巣父(そうほ)は、許由が耳を洗っている姿を見てその理由を尋ね「ならば汚れた水を牛に飲ませることはできないので、もっと上流に行く。」と、牛を引っ張っていったと伝わります。今回は裏側の彫刻は扉で隠れて見えにくかったですが、普段は見ることができます。なお唐門は来年6月から修復に入ります。門が開いたのは1日だけでしたが、飛雲閣と書院の夜間公開は24日から31日まで行われていますので、ぜひ最後の機会にご覧ください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。