廬山寺の節分会 追儺式鬼法楽


2月3日の節分。今回は京都指折りの激戦地、廬山寺追儺式鬼法楽の様子です。

数ある京都の節分行事の中でも、まず名前が挙がるのは吉田神社、次にこの廬山寺ではないでしょうか。吉田神社は昨年、超激戦の追儺式と火炉祭を間近で見てきましたので、今年は廬山寺に足を延ばしてみました。個人的には廬山寺の追儺式を見るのは今回で3回目。過去の2回は、この仕事を始める前のことでしたので、あまりよい資料が無く、今回は2時間以上前に行って、まずまずの場所から見ることができました。廬山寺の節分も激戦地の一つ。最前列か2列目でも2時間前(13時)にはいないと難しいかもしれません。

廬山寺が有名なのは、登場する鬼が踊るような仕草で本堂に入っていくために「鬼おどり」と呼ばれているところからでしょう。鬼が踊ると聞けば、誰しもが一度は見てみたいと思うものです。京都の節分行事は吉田神社も廬山寺も含め、その多くが大正・昭和期に復興したものが多く、廬山寺は大正の終わりから現在の形の行事が行われるようになりました。廬山寺は元三大師・良源によって平安時代の中ごろに船岡山の南に創建されお寺で、秀吉の命によって現在の寺町通に移って来ました。節分の鬼法楽も、元三大師・良源に由来します。平安時代、村上天皇のころ、良源が宮中で300日の護摩供養を行っていたところ、修業の邪魔をしようと三匹の鬼が現れました。

この鬼たちは、人間の持つ三種の煩悩、「貪欲(とんよく:強い欲望)」「瞋恚(しんい:怒り、憎しみ、恨み)」「愚痴(ぐち:物事を正しく判断・認識できない愚かさ)」の三毒を表していましたが、良源は、護摩の法力と、持っていた独鈷や三鈷の法具で降伏させたと伝わっています。廬山寺の節分祭では、この故事に則って行事が展開されていき、この日に限って、良源が鬼を退散させた時に使ったとされる、独鈷・三鈷、良源が宮中で使用した降魔面も特別公開されています。

廬山寺境内には節分会に合わせて特設の通路が元三大師堂に向かって作られており、15時になると僧侶らがお堂に入り、厄除け開運、福寿増長の護摩行を行います。そしてしばらくすると、鬼たちが登場。貪欲を表す赤鬼は手に燃え盛る松明と宝剣を、瞋恚を表す青鬼(緑色)は斧を持ち、愚痴を表す黒鬼は大槌を持っています。そして太鼓と法螺貝の音に合わせて、リズミカルにのっしのっしと通路を進んできます。これぞまさに「鬼おどり」ですね。

この鬼おどりが始まる時間になると境内はもう大変な混雑ぶりで、門から境内に入れない人も多くいます。特に今年は日曜日だったため、早くから混雑していたように思います。鬼おどりは比較的高い通路で行われますので、境内に入れば人垣の間から見られる人も多いことでしょう。あえて後ろに陣取って三脚を立てて写真を撮る方もおられます。通路の前の方での注意点は、赤鬼の持つ松明が目の前をブーンと通りますので、熱さを感じ、場合によっては松明の燃えカスが落ちてくる危険もあること。赤鬼には、この燃えカスを回収する人も一人ついています。

さて、ゆっくり進んできた鬼たちは、そのまま護摩行の行われているお堂へと入っていきます。そしてお堂の中をグルグルと回って行の邪魔をしだすのです。すると今度はお堂から追儺師が登場して通路に立ち、願文を読み上げ、法弓でもって四方をと中央の五か所を矢で射っていきます。これは元三大師が使用した降魔矢に由来するそうですが、廬山寺に限らず護摩行の前にはよく見られる魔よけの修法でもあります。こうして悪鬼や邪霊が降伏されていくのです。なお、射られた矢は持ち帰ることができます。5本しかありませんので、手にした方は幸運ですね。

やがて、先ほどの鬼たちも苦しみながら堂内から出てきて、再び通路を逆走すると戻っていきます。鬼たちはのけ反ったりをしながら、なかなか迫力のある動きを見せてくれました。こうして鬼が追い払われるといよいよ豆まきが行われます。廬山寺の豆は蓬莱豆といい、大豆の外側を砂糖で固めた紅白の豆で、元三大師が魔を滅する「魔滅(まめ:豆)大師」といわれ観音菩薩の化身としても信仰された、その豆大師を表しているのだそうです。紅白の豆を両方頂けば、なんと寿命が6年延びるといわれています。ただ、いつもの豆のように勢いよく噛み砕こうとすると痛い目に会います。豆というより飴に近いですので、じっくり味わいましょう。蓬莱豆は境内でも一袋400円で買うことができます。

豆まきは、この蓬莱豆を持った蓬莱師から「福はうち!」のかけ声で始められ、僧侶や福娘らが、蓬莱豆と餅をまいていきます。蓬莱豆は袋に入っていませんので、手でキャッチするのは非常に難しく、袋や帽子などをうまく使わないと取るのは難しいでしょう。また、蓬莱豆はカチカチで、お餅も当然硬いので、当たると痛いです。また、境内の凄まじい混雑ぶりに比して撒かれる量は少なめ。そのため、激しい奪い合いとなります。取れたらラッキーくらいの心づもりがよいでしょう。私は前の方にいたため、紅白それぞれを取ることができました。くれぐれも怪我のないようにご注意ください。

こうして、大賑わいのうちに廬山寺の追儺式は終了しますが、実は追儺式の前後には「鬼のお加持」があります。追儺式には登場しない黄色の鬼が、宝剣で体の悪いところを加持して治して下さるもので、鬼はちゃんと邪気払いをされていて、いわゆる「よい鬼」になっています。加持の前に鬼に体の悪いところを伝えると、ちゃんとそこを加持して頂けます。このお加持は丁寧に一人づつ行われますので、希望者数に対して加持してもらえる人数は少ないです。加持は元三大師堂の向かって右端で行われますので、希望者は予めその辺りにいるほうがよいでしょう。なお、鬼の前には僧侶が二人おり「おん ばらだ はんどめい うん」と、元三大師のご真言を唱えています。これは実は如意輪観音と同じなのですが、元三大師が如意輪観音の化身とされているためです。

以上、京都でも屈指の人気を誇る廬山寺の節分会。今回は2時間前から行ったこともあって、近くで動画も撮ることができました。こうしてコツコツと各地の節分行事の資料を集めて、将来質の高い講座を開けるようになりたいですね。それでは、鬼が踊る迫力ある映像をお楽しみ下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。


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