新日吉神宮の神幸祭 2017年

新日吉神宮 神幸祭
新日吉神宮の神幸祭が、5月14日に行われました。

新日吉神宮三十三間堂近くの東大路から通称・女坂と呼ばれる坂を登ると新日吉神宮(いまひえじんぐう)があります。14日は神幸祭が行われ、神仏相混じった儀式や、剣鉾、お稚児さんの粽配りなどが見られました。新日吉神宮は「神宮」と名がつきます。神宮と呼ばれるのは、天皇家やその祖先とされる神々を祀る神社です。京都では平安神宮に桓武天皇と孝明天皇が、白峯神宮に崇徳天皇と淳仁天皇が、そしてこの新日吉神宮には後白河天皇がお祀りされています。

新日吉神宮 神幸祭三十三間堂や法住寺周辺には、かつて後白河天皇が上皇となった後の御所・法住寺殿があり、新日吉神宮はその鎮守として、都を守っていた近江の日吉大社の7柱の神々をお移しになったのが始まりです。神社はその後、応仁の乱で焼かれて衰えますが、豊臣家滅亡の後に、秀吉の墓や当時の豊国神社へと続く参道に登れないようにとの意味もこめて新日吉神宮が再建され、立派な社殿を築かれました。一方で、新日吉神宮内にはひそかに秀吉を祀ったとされる樹下社(このもとのやしろ)も残されています。秀吉の元の苗字は木下で、徳川全盛時代に祀られたとされるのも興味深いところです。

新日吉神宮 神幸祭さて、5月に行われる神幸祭は「小五月会(こさきのまつり)」とも呼ばれ、平安時代からの古い由緒を持つお祭りです。後白河上皇の子・二条天皇の時代には宮中で競馬(くらべうま)などが奉納されていました。その後、新日吉神宮の祭儀とされて、戦国のころまで300年間続きますが、いったん中絶。江戸時代の1655年になって復興されました。その後、350年以上にわたって連綿と続くお祭りです。

新日吉神宮 神幸祭復興に際しては天台宗のお寺・妙法院の力添えも大きかったそうです。新日吉神宮の本社である日吉大社は、天台宗の本拠地・比叡山を古くから神域としていた神で、比叡山も古事記では日枝山(ひえさん:日吉山)と記載されています。後に、天台宗の開祖・最澄が後の延暦寺を開くにあたり、日吉大社を天台宗の守護神として崇敬しました。このようなつながりから、妙法院と新日吉神宮は関連が深く、現在でも神幸祭の神事では、新日吉神宮の神職に加えて日吉大社の神職が来られて祝詞を奏上されるだけでなく、妙法院からのお坊さんによるお経が交互して、神仏習合の儀式を目にすることができます。

新日吉神宮 神幸祭儀式が終わると神幸列が出発します。行列の先頭を進んで街を清める剣鉾は、平成22年に数十年ぶりに復興したもので、独特の澄んだ音色を響かせていました。神は尖ったものの先端や輝くもの、賑やかな場所を好み、剣鉾は災厄をもたらす疫神を集めて通る場所を清めていくとされます。ただ、現在は道を横切る電線が街には張り巡らされているため、剣鉾を振れる場所は限られているのが残念です。

新日吉神宮 神幸祭また神幸列ではお稚児さんが厄除けの粽を配って歩きます。粽は祇園祭のものが圧倒的に有名ですが、京都のお祭りでは祇園祭以外でも見ることができます。このお稚児さんの中には小さな子どもたちもいて本当にかわいらしく、中にはベビーカーに乗ったお稚児さんもいました。少し大きな元気なお稚児さんにはご家族の方がつきながら、お稚児さんは一本ずつ粽を手渡してくれます。お稚児さんそれぞれが、出会う方に一生懸命に配ってくれますので、何本も粽をいただく方もおられました。私も写真を撮りながらも2本いただきました。本当にほほえましい光景です。

新日吉神宮 神幸祭新日吉神宮の氏子圏は結構広く、東は本社付近の山沿い、北は五条、西は河原町、南は今熊野の辺りまでと広範囲。お稚児さんたちも馬町の交差点を過ぎてどんどん歩いていかれました。きっと、街々に笑顔を配っていったことでしょう。神幸列には白幣付きの大きな榊の木もあって、道中で氏子の方々に木の枝を切って配っていきます。また、軽トラックの上では鎧武者姿の男の子(稚児大将・児武者大将)が大人と一緒に粽を作り、こちらも配っていました。神仏習合の儀式から、かわいらしい子どもたちが一生懸命にがんばる姿も見られるお祭りです。

 

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。

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