雨の青蓮院 新緑と霧島つつじの庭


動きの遅い低気圧によって、各地でこの時期としては記録的な大雨となっています。雨の日はお出かけが億劫になりがちですが、実は雨の京都はとっても綺麗です。今回は雨の日でもお勧めの青蓮院をご紹介。今は柔らかな新緑に真っ赤な霧島ツツジが調和して、ほれぼれするお庭が広がっています。

今年も災害をもたらすほどの大雨が降る季節に入ってきました。昨年の紀伊半島での豪雨災害とも共通しますが、大雨の原因の一つに「低気圧の動きの遅い」ことが挙げられます。大雨は「山」と「風向き」の2つがポイント。低気圧の動きが遅いということは「風向きがほとんど変化しない」ために、湿った風が山にぶつかって上昇気流が強まる場所では、大雨が長時間続いてしまうことになります。静岡県の天城山では、24時間雨量が驚愕の649mmにも達しています。これは梅雨や秋雨・台風シーズンも含めた、天城山の過去35年ほどの中でも観測史上1位。5月2日の日降水量566.5mmは、アメダスや気象官署の全国全ての地点を含めても5月の歴代1位となる、とてもつもない数字です。そのほか、三重・静岡から関東以北では5月としては記録的な雨量を観測した地点が続出。北日本は太平洋側を中心にまだこれからも厳重な警戒が必要です。

なんとも話題の転換をしにくいですが・・・、雨は災害をもたらす一方で、ほどほどであれば私たちの心にも潤いを与えてくれるもの。特に庭園鑑賞がお勧めで、雨の日は艶やかに緑が引き立ち、石は輝きを増して、苔は生き生きと水を含み、花に降る雨は光の滴となって煌きます。東山にある大きな楠が目印のお寺・青蓮院も、雨の日にはたいへんおススメです。

青蓮院は天台宗の数あるお寺の中でも大変に格式の高いお寺。天皇の皇子や摂関家の子が門主(住職)を代々務めた門跡寺院としての歴史を誇り、江戸時代には後桜町上皇の仮の御所としても使われました。更には天台宗に伝わる秘法(熾盛光法)を伝え、全国でもこちらだけの御本尊・熾盛光如来(しじょうこうにょらい)は、国家の安泰や国民の繁栄、天変地異を鎮める、皇室の加護など、国家的な災厄を鎮める仏様として信仰されています。

平安の昔から続くこれだけの格式があればこそ、そのお庭も当代きっての名作庭家が手掛けています。主庭は、銀閣寺のお庭と同じく室町時代の相阿弥の作庭と伝わり、そこから連続するもう一つの霧島つつじが美しいお庭は、二条城・二の丸庭園や南禅寺の方丈庭園、仙洞御所の庭も手掛けたとされる江戸時代の初期の作庭家・小堀遠州の手によるお庭とされています。まさに時代を越えた夢のコラボレーション!四季折々に、美しくないわけがありません!!・・・少々熱く書きましたが、建物も寺宝も歴史も、個人的には知れば知るほど「すごい!」と思えるお寺です。またどこかで、すごさを書きたいと思います(笑)

さて、青蓮院の魅力の一つは、建物からの眺めと歩く眺めの両方を楽しむことが出来る点です。皇室とつながりの深い門跡寺院ということで、建物は再建されたものも含めて御所風。最初に入る華頂殿からは額縁のようにお庭を眺めることができ、じっくりと座って風景を眺め、雨や滝の音に耳を澄ませて過ごせば、この部屋だけでも時間があっという間に過ぎていくことでしょう。新旧の素晴らしい襖絵も眺めつつ、小御所や宸殿などを歩けば、一歩ごとに変わっていくお庭の様子に、あちらこちらでカメラのシャッターを押したくなります。

一方、お庭を散策すれば、現在は「霧島の庭」の由来となったキリシマツツジが見ごろを迎え、湧き立つ真っ赤な雲のごとく、目の覚める赤さで花を咲かせています。エメラルドグリーンの柔らかい新緑に包まれた散策路を歩いていると、突然目の前に現れる深紅のツツジ。この赤色は他の追随を許さないほど、赤の中の赤。お庭の冠を飾るにふさわしい花です。また、雨にしっとりと濡れるお庭を散策するのもまたよいもの。緑も赤も色彩がいっそう輝きます。以上、書き出せば、あるいは語り出せばきりがありませんが、今回は動画も撮ってきましたので、是非ご覧ください。また、そのほかの写真はFacebookにて公開しています。雨の青蓮院の魅力をお伝えできれば幸いです。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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