先日、南禅寺・天授庵を訪ねてきました。秋の紅葉も見事なお寺ですが、この時期は美しい新緑を静かに楽しむことができます。
5月も下旬が近づき、奄美地方まで梅雨入りをして来ました。天気図には梅雨前線が現れ、豪雨をもたらす険悪な積乱雲の塊も気象衛星に映るようになってきました。近畿地方の梅雨入りの平年は6月7日頃とまだ先ですが、梅雨入りは「大雨の季節の始まり」を告げるものです。気象庁の災害資料を見れば、平成に入って以降、前線や台風によって災害が起こらなかった年は一年たりとも見当たりません。平穏無事の願いもむなしく、今年も必ず各地で豪雨災害が起こるでしょう。いざという時が来るかもしれないと思って、避難場所や、非常袋の確認などを行っておいて下さい。「天災は忘れたころにやってくる」ものです。
話がそれました。梅雨入り前に見ておきたいのが、美しい新緑のお庭。紅葉の名所が多い京都は、それすなわち新緑の名所が多いともいえます。紅葉のガイドブックを手に、この時期の京都を回ってみるのもよいでしょう。南禅寺の天授庵は、私のお勧めのお寺の一つ。枯山水の庭園と、池泉回遊式庭園の二種類のお庭を楽しめ、いずれも見事です。近年は紅葉の時期に有名になってきて人も多くなりましたが、新緑の時期は大変静かにじっくりとエメラルドグリーンの風景を堪能できます。
もうじき池には睡蓮も咲いて華やかさが増し、飛び石や木の橋にも風情を感じられますね。交通の便もよく、京都らしい穏やかな時を過ごすにはお勧めです。南禅寺の境内も紅葉の名所ですので、この時期の新緑も美しく、疏水が奏でる水の音にはヒーリング効果も感じます。レンガ造りの水路閣が風景にメリハリを加え、修学旅行生も歩いているのを見かける時期になりました。
この時期は、初夏に赤く色づく野村もみじが綺麗です。特に逆光に透かして見れば、その輝きはまさに「紅葉」そのものです。野村もみじだけがたくさん植わっていたら、さぞ面白いのかもしれませんが、なぜか緑の楓の中に1本だけ混ざっているというところが多いです。家庭の庭木でもよく見かけます。南禅寺では水路閣の前にあり、天授庵の中にもありますので、初夏の紅葉も楽しんでみて下さい。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。
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