永観堂の紅葉がピークを迎え、素晴らしい光景が広がっています。
京都の秋は永観堂ともいわれるほど、永観堂の境内は楓の量が多く、その数は3000本あるといわれます。永観堂は正確には禅林寺というお寺で、平安時代の創建以来、もみじの寺として知られていました。秋はもみじの永観堂として、現在も秋の京都を代表する紅葉のお寺として多くの人でにぎわいます。
永観堂はもとは真言宗のお寺で、清和天皇から禅林寺の名を賜ります。その後、永観律師の時代になると、永観は境内に貧しい人々のために薬などを与える施薬院を設けるなどして、庶民からの人気を集めて境内は賑わい、いつしか永観堂と呼ばれるようになりました。永観の時代にご本尊が阿弥陀如来となり、さらに後の世に浄土宗に改宗して現在に至っています。
永観堂で有名なのは「見返り阿弥陀」。永保二年(1082年)2月25日、永観が阿弥陀堂で本尊の周りを回る修行「行道」をしていたとき、ふっと気が付くと須弥壇の上にいたはずの阿弥陀様が目の前に立って振り返り、「永観、遅し」と励ましたそう。阿弥陀様は、そのままの姿の像となり、現在も首をひねって振りかえる珍しい姿の像を見ることが出来ます。遅れるものを待つ姿勢、思いやり深く周りをみつめる姿勢、自分自身を省みる姿勢なども教えてくれる像となっています。
永観堂の拝観は通常は600円ですが、紅葉の時期に合わせて行われる秋の寺宝展の時期は1000円となります。毎年展示内容が変わります。境内には「七不思議」もあり、今の時期は「岩垣紅葉」が美しく色づいています。永観堂の場所には、かつて藤原関雄の山荘があり、彼の歌「おく山の いわがき紅葉 散りぬべし 照る日の光 見る時なくて」の歌にちなんでそう呼ばれています。
お勧めなのは、多宝塔からの眺め。抜群の眺望を誇るだけでなく、西方極楽浄土を臨むように西へと開けた風景は、夕景が特に美しい。16時までに入れば、西山へと日が沈む光景を眺めることもできます。眼下には真っ赤な紅葉が広がり、私も一度だけ夕日を目にしたことがありますが、非常に感動的です。現代人でも感動できるのですから、浄土の世界が信じられた時代はさぞ人々の心を打ったことでしょう。階段がたいへんですが、お時間と体力のある方はぜひ足を延ばしてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。