恵比須神社 湯立て神楽


1月8日から12日にかけて恵比須神社で、十日えびす大祭が行われました。8日には、境内を清める湯立て神楽神事があり、境内が清められました。

恵比須神社の十日えびすは、京都の新年には欠かせない行事の一つです。境内には五日間に数万人の人が訪れるとされ、福笹や縁起物が飛ぶように売れて行きます。えびす神は、七福神の一人、商売繁盛の神として知られ、釣った魚を物々交換で米等と替えていた(すなわち交渉や商売が上手だった)ところから、商売繁盛の神となっていきました。えびす神といった場合は、神話の中でイザナギとイザナミの子どもである蛭子(ひるこ)神を差す場合と、大黒様の子どもである事代主命(ことしろぬしのみこと)を表す場合とがあります。いずれも水と関わりがあり、えびす様は海の神として庶民からは厚い信仰を集め、手には釣り竿と鯛を持つ姿が定番となっています。1月10日はえびす様のお誕生日で、それを祝い、福にあやかろうというのが十日えびすです。

福笹は、江戸時代に京都の恵比須神社が始めたものが全国に広まったものです。笹は「お札(おふだ)」の替わりとして発明されました。笹は、常に青々として枝は真っすぐと伸び、しなやかさもあって簡単には折れません。そういったところが、長く続けることをよしとする商売繁盛のご利益に通じ、人気を集めました。なお、庶民派の神であるえびす様は、夜にお酒を飲んだ千鳥足で参拝に来ても、おおらかな心で迎えて下さるとされ、「商売繁盛で笹もってこい」の有名な文句も、そもそもは「酒もってこい」だったともいわれています。現在も恵比須神社が最も賑わうのは10日の夜のようで、京都の企業人の中には、ほろよい気分で参拝される方もおられるようです。実際、商売が繁盛したらお礼にお酒を持って行く(奉納する)のは、ごく一般的な行ないかもしれません。

さて、湯立て神楽神事です。こちらは境内を清める意味で、十日えびすの期間の初日に行われています。釜で湯を沸かし、そこに笹の葉を浸して、勢いよく周囲に飛ばして、境内を清めます。京都でも何カ所かで見ることが出来る行事で、直近では1月20日に城南宮で行われます(昨年ブログに書いていますので、よければご覧ください)。湯立て神楽では、その熱い湯を飛ばすことが最も重要ですので、当然ですが周りには熱湯が飛び散ります。湯の熱さは、その神社やその時によって多少異なり、今回の恵比須神社では熱さは感じませんでしたが、ある程度の距離を保っていたほうがよいでしょう。また、距離によっては相当量の湯が飛んで来ますので、体や服、カメラが濡れます。電子機器はタオルなどでしっかりとガードして下さい。

湯立て神楽では、湯に塩や酒や米を入れて御幣のついた棒で湯をかき回す神事が行われ、湯は汲まれて神前にささげられます。その後、いよいよ笹を湯につけて、豪快に勢いよく境内に湯が撒かれます。この湯にかかると無病息災で過ごせるともいわれていますので、濡れるのはむしろありがたいかもしれませんね。私もたっぷりとかかって来ました(笑)城南宮では、釜や巫女さんからは距離がありますが、境内のせまい恵比須神社の場合はかなり近く、そのぶん湯の温度は低めにされているようです。

湯立て神楽が終わると、引き続いて餅つき神事が行われます。蒸されたもち米が臼に入れられ、神職によってペタペタとつかれて行きます。やはりそれなりの力がいるようで、体格のよい方が出て来られる場面もありました。

餅が出来上がると、今後は巫女さんたちによって餅が丸められていきます。つきたてのお餅はまだ熱く、巫女さんも大変そうでしたが、手早く餅を丸めて行きました。このお餅は神饌としてささげられ、11日の「残り福」の時に舞妓さんから福笹を買われる方に手渡されます。文字通りの残り福ですね。京都の恵比須神社でも、東映の女優さんによる宝恵かごの社参や、舞妓さんによる福笹の授与など華やかな行事があり、年の初めに景気のよい賑わいを感じさせてくれます。また、近日中にご紹介予定です。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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