立夏の京都 二十四節気・季節の境目


6日は二十四節気の一つ、「立夏」。京都の気温は午後1時頃に夏日までもう少しの23.6℃まで上がりました。
「今日は立夏、暦の上では今日から夏」と、よくテレビでも気象予報士が話しています。しかし、蒸し暑く寝苦しい真夏はまだまだ先のこと。そんな感覚のずれから「二十四節気は、旧暦なので実際の気候とは違う」といった話を聞くことがあります。でも、それは実は違っています。二十四節気は現代でも使えるもので、感覚のずれは現代の私たちが”昔の人の感覚”とずれているからなのです。

二十四節気と太陽太陰暦

二十四節気は、月を基にした暦である太陰暦と、太陽の動きによって変化する実際の季節とのずれを埋めるために作られたものです。気温によって大きな影響を受ける農業にとっては、月を基にしたカレンダー上の暦よりも、実際の気候に即した暦の方が重要だったのです。そこで、両者を組み合わせて暦が作られました。太陽と月とを合わせているので、旧暦のことは太陰暦とは呼ばず、「太陽太陰暦」と言います。
では「そもそも最初から今のように太陽をもとに暦を作ればいいじゃないか」となりますが、そうは簡単ではありません。太陽の変化は、多くの人には毎日空を見ていてもよくわかりません。一方で月は、約28日周期で誰でも目で見てわかるように満ち欠けをしていきます。空に登る時刻も今は毎日1時間ほど違っています(ずれは時期により異なる)。この分かりやすさが、月が暦の基として支持されてきた理由です。

立夏は「これから夏を感じられる頃」を表している

さて、太陽の動きをもとにして作られている二十四節気ですので、太陽暦になった現代の世でも変わらず使えるものです。では、なぜ「立夏」や「立秋」などについて、現代の私たちと季節のずれが起こるのでしょうか。
私が以前読んだ本には、その答えが書かれていました。それは例えば「立夏」について言うと、「昔の人はこの日から夏を感じられる頃」として捉えていた、ということです。
科学的に見て行きましょう。昔の人たちの中心は京都。現代の数字ですが、1971年から2000年まで京都の平年値を見てみます。最高気温が25℃以上の日を「夏日」と言います。夏日の日数の平均は4月が3.2日、月の初めに「立夏」がある5月になると14.2日と急増します。これは現在の数字ですので、都市化の影響を差し引くと、昔はもっと顕著に「立夏」の頃から「夏日」が現れていたのでしょう。
同じように、まだ真夏の8月7日前後に迎える「立秋」も、平年値を見ると絶妙なことに気が付きます。最高気温の平年値のピークは7月30日~8月5日で33.4℃。8月6日以降はどんどん下がっていきます。すなわち「立秋」以降は暑さのピークも過ぎ「秋を感じられる日」も出てくることが、長年の統計からも証明されているのです。
いかがでしょうか、昔の人の知恵には驚かされるばかりです。「立夏」は「今日から夏」なのではなく、そもそもは「夏を感じられるようになる時期」を表しています。立秋、立冬、立春も同じです。二十四節気の暦は、現代においても立派に季節の境目を表現しているのです。
と言うことで、今日は「立夏」。これから数日は夏を感じる蒸し暑い日が続きそうです。まだ体が慣れておらず、体調を崩しやすい時期ですので、十分にご注意ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

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