忘れてはいけない平和池の決壊


平和池の決壊

先日、亀岡市の平和池の跡地を訪ねてきました。昭和26年の大雨で決壊して100名近い方が亡くなりました。

平和池の跡地大雨が増加している昨今、ため池の決壊による災害も見逃せません。先日の九州北部豪雨でも数十ものため池が決壊して、大きな被害をもたらしました。ため池は河川と比べて治水対策が遅れており、さらに老朽化したため池も多く、ため池の下流にお住まいの方は決壊のリスクを現実的に考えておく必要があります。大地震による決壊リスクも近年は指摘されています。ため池というと小規模なイメージですが、中にはダムのような巨大なため池もあり、その決壊は瞬時に家を押し流し、命を奪う恐れがあります。

平和池跡の看板京都でもため池の決壊による痛ましい災害が起こっています。昭和28年の南山城大水害では、大正池が決壊したことにより井手町の玉川に濁流が押し寄せて105名もの人命が失われました。玉川は天井川だったこともあり、2階から濁流が襲うという、信じがたいことが起こりました。濁流は何百トンもある岩石をも流す土石流で、家も人もひとたまりもありませんでした。南山城大水害については以前にブログに書きましたのでご一読ください。

平和池の決壊その2年前の昭和26年7月11日、亀岡市でも大雨によってため池の平和池が決壊して甚大な被害が生じました。未明から降り出した雨は明け方にピークを迎え、当時の亀岡の記録によると7時~8時までの1時間雨量が20㎜、同じく9時までに66㎜、10時までに34㎜、11時までに20㎜の雨を観測。7時~11時までの4時間の累計は140㎜に達しました。この強烈な雨により、9時40分頃、年谷川の上流にあった「平和池」が決壊。下流に猛烈な水量が一気に押し寄せました。

平和池の決壊平和池は、京都府が直営工事を行った灌漑も兼ねた防災用のため池で、その周囲は4km、高さは19mもあり、貯水量は23万立方メートルの巨大なため池。昭和24年に完成したばかりの最新鋭のため池でした。決壊をしたのが午前10時ころ、下流の篠村柏原地区を襲い、一瞬のうちに80戸(人口280人)の建物のうち半数の約40戸が流されました。死者は柏原地区だけで75名を数え、その中には25名もの子供が含まれていました。亀岡町でも21名の方が亡くなりました。

平和池と柏原地区の位置当時の記事を、手元にある「京都自然紀行(人文書院)」より引用してみます。「一面の水煙がもうもうと上がり、何もみえぬ。年谷川にかかる鉄橋も瞬時のうちに視界から去り、すべて水中に没したかの感があり、誠に恐ろしい水量である。それも約5分から10分位のわずかな間で水は急減衰しその勢いも衰えた。平和池の水がはけたらしい。柏原部落から続々と避難者が鉄道路線にそって着の身着のままで町役場に救済を求めてきた。(昭和二十六年水害史)」、「自宅前の竹藪がバシ、バシと大きな音をたて、大人ひとかかえもある大木が根っこから直立したまま流れてきた…屋根が浮いて流れていく。木片と一緒に人も流されていくがどうしようもなかった。(京都新聞)」

平和池の決壊地図を見ると、平和池から柏原地区はかなり離れていますが、それだけ流れ出した水量が多かったということでしょう。まさに集落の人々にとっては逃げる間もない出来事だったと察します。災害はこれだけでは終わりませんでした。平和池の決壊から1時間以上たってから、増水する保津川の水が逆流し、年谷川は決壊。さらに被害は拡大しました。一連の水害で亡くなった人は京都市を含め114名にも上る大災害でした。

柏原地区の慰霊碑現在、平和池の跡には決壊を伝える看板が建てられています。場所は、つつじが丘の住宅街を最も南まで登った先の下り坂です。また、柏原地区には慰霊塔も建てられています。いずれも2011年に新しく解説版が建てられて、当時の悲劇を今に伝えています。ため池の決壊は、今でも大雨や大地震の時には想定されるリスクです。ため池の直下のみならず、下流の離れた場所でも甚大な被害を受ける恐れがありますので、いざという時には川から離れたり頑丈な建物に逃げ込むなど、万が一のイメージをしておいてください。

柏原地区の慰霊碑説明

平和池の決壊

年谷川

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吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。


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