昨年、旧峰山町(京丹後市)に立つ丹後震災記念館の場所を訪ねてきました。
2017年3月7日で、北丹後地震から90年を迎えます。北丹後地震は、1927年3月7日に、京都府北部を震源として発生しました。マグニチュードは阪神大震災と同じM7.3、死者・行方不明者は2925名を数えた大地震です。震源地の丹後半島では、家屋の倒壊率は7割から9割にも達する揺れの激しさ。さらに運の悪いことに、地震の発生時刻は夕方の食事時で、火災も多数発生し、旧峰山町ではなんと家屋の97%が焼失。町はほぼ全滅状態になりました。
被災目撃者の手記「奥丹後震災記」にはこう書かれています。「激震と同時に各所より発した火災は一昼夜にわたり全街をなめつくし、圧死、焼死、見るも狂わしき無残の死体は雨雪にさらされ泥にぬれて随所に横たわっている」。恐るべき惨状が起きていたのです。また、山間部では山崩れ・がけ崩れが多発、90km離れた大阪でも道路の亀裂や泥水の噴出が起こりました。
北丹後地震によって郷村断層と山田断層が出現しました。この地震の後の論文で初めて「活断層」の言葉が使われたそうです。郷村断層は、旧網野町から旧峰山町・大宮町にまたがる断層で、現在は、京丹後市網野町の樋口(高橋)・小池(郷)・生野内の3カ所でその痕跡が保存され、国の天然記念物に指定されています。以前に郷村断層の記事をブログで書いています。
旧峰山町にある丹後震災記念館は、被災者の霊を弔い、震災の教訓を活かすことを目的として昭和4(1929)年に建てられたもので、設計は京都府庁旧本館にも携わっている一井九平(いちいくへい)です。地上1階、地下2階の構造で、昭和初期の洋風建築を取り入れつつも、震災直後の建物とあって、鉄筋コンクリートで窓を極力小さくしているのが特徴。武道館(元講堂)には、画家である伊藤快彦(よしひこ)によって震災の惨状が描かれた3枚の油絵が掲げられているそうです。平成17年には京都府指定の文化財にも指定されましたが、残念ながら鉄筋コンクリート造りであっても老朽化により耐震基準を満たさず、2012年から閉鎖をされています。
昨年は、閉館をしているのを知って訪れました。建物は急な坂を上り切った高台にあり、見晴らしがよい場所。旧峰山町の街並みが一望できました。現地に立って思い出したのは、震災直後の写真です。まだ雪が残る中、家々がことごとく倒れてしまった光景は衝撃的です。いまは街は整然と復興をしていますが、当時はこの高台からもむごい光景が広がっていたのでしょう。丹後震災記念館の隣には、震災記念塔もあり応時の出来事を伝えています。先日、丹後震災記念館は、数億円かかる保全費用の捻出が困難なため、閉鎖されてからは野ざらし状態であるとの記事が出ていました。残念ではありますが、お金がないというのはどうしようもないことでもあります。
北丹後地震は、昭和に起きた大地震ということもあり、悲惨な震災経験が語られた本が京都の図書館には置かれています。京都にお住まいの方には、ぜひご一読いただきたい、涙なしでは読むことができないような厳しい話が書かれています。だからこそ忘れてはいけません。震災からの教訓もたくさんあります。過去を知り、そして来たるべき次の大地震に備えることが大切だと感じます。なお、3月18日に「まいまい京都」さんで、京都市街地の花折断層を歩きながら災害史についてお話しする散策を開催します。私の分の収益は、全額災害義援金として寄付させていただきます。まだ少し空きがありますので、よろしければご参加ください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。
祖母はこの地震で兄弟みなを失ったと父から聞いたことがあります。多くを語らなかったそうです。
改めてこの地震に目を向け、いまは亡き祖母を思う機会になりました。図書館に行って本を探してみます。ありがとうございました。
コメントありがとうございます。そうだったのですね。当時の記録は臨場感があり、お辛い内容かもしれませんが、地震の恐ろしさを伝えてくれている大切な記録だと思います。